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東京地方裁判所 昭和54年(ワ)4644号 判決

原告 書泉労働者組合

右代表者執行委員長 関口武男

〈ほか一八名〉

右原告ら訴訟代理人弁護士 芳永克彦

原告秋山〈ほか四名〉訴訟代理人兼その余の原告ら訴訟復代理人弁護士 内藤隆

被告 株式会社 書泉

右代表者代表取締役 酒井正敏

右訴訟代理人弁護士 笠原喜四郎

主文

一  被告は、原告らに対し、それぞれ別紙認容金額一覧表の「認容金額」欄及び「遅延損害金額」欄記載の各金員を支払え。

二  原告前田隆承及び同大藪平太を除く原告らのその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを五分し、その二を原告書泉労働者組合の、その余を被告の各負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告ら

1  被告は、原告らに対し、それぞれ別紙原告請求金額一覧表の「請求損害金額」欄及び「遅延損害金額」欄記載の各金員を支払え。

2  訴訟費用は、被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  被告

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は、原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  当事者

(一) 被告は、書籍雑誌の販売等を目的とする会社であり、肩書住所地に「書泉グランデ」(以下「グランデ店」という。)の、千代田区神田一丁目二一番地に「書泉ブックマート」(以下「ブックマート店」という。)の両店舗を開設し、書籍雑誌の小売販売業務を行なっている。

昭和五四年五月当時、被告の従業員数は、九九名(内、正従業員七九名、準従業員二名、パートタイマー一八名)であった。

(二) 原告書泉労働者組合(以下「原告組合」という。)は、被告の従業員をもって組織された労働組合(昭和五四年三月当時の組合員数は二八名。内、正従業員一八名、パートタイマー一〇名)であり、権利能力なき社団(代表者執行委員長関口武男)である。

(三) 別紙原告請求金額一覧表の原告番号2ないし9記載の各原告は、いずれも原告組合の組合員であり、また、同表の原告番号10ないし19記載の各原告は、いずれも原告組合を支援する労働者をもって組織する「書泉闘争を支援する会」の構成員である。

2  不法行為に至る経緯

(一) 原告組合は、昭和五三年度春期、夏期及び年末の各要求に関する団体交渉の促進と解決とを求めて争議行為に入り、昭和五三年一一月二二日からはグランデ店及びブックマート店の両店舗について無期限のストライキに入った。

(二) これに対し、被告は、原告組合の右両店舗での無期限ストライキを実力で排除し、両店舗での営業を再開するため及び原告組合の組織破壊の目的で、訴外橋本秀昭、同斉藤滋寿、同高橋一己、同松島成佳、同秋山義憲、同田口智司ら拓殖大学国体論研究会出身者、右翼団体大日本赤誠会所属の者、暴力団系の組合つぶし専門のいわゆる労務ゴロ等を多数臨時従業員(以下これらの者を「会社臨時従業員」という。)として雇用した。

3  不法行為の発生(本項においては、特に断わらない限り、日時はすべて昭和五四年である。)

被告は、会社臨時従業員らに、被告店舗に近いお茶の水駅付近の旅館を宿舎として提供し、朝夕マイクロバスで送迎するなどの便宜を供与し、日中は被告店舗内又はその脇に駐車させた右マイクロバス内に会社臨時従業員を常駐させ、右会社臨時従業員をして、次の(一)ないし(二四)のとおり、原告組合、原告原ら原告組合員のグランデ店及びブックマート店での争議行為並びに原告組合、原告原ら原告組合員、原告大藪ら支援労働者の被告に対する抗議行動、情宣行動等に対して不断の挑発、暴行、脅迫等を繰り返させたほか、原告原ら原告組合員の自宅及び原告大藪ら支援労働者の職場に赴かせ、同原告らに対し繰り返し脅迫及び嫌がらせを行なわせた。

(一)(1) 被告は、二月二七日、会社臨時従業員約六〇名をグランデ店に導入し、同店においてストライキ中の同店勤務の原告組合員に対してブックマート店での就労を命ずるとの就労命令を発し、かつ、右会社臨時従業員らの有形力をもって右原告組合員をブックマート店に追いやり、原告組合のグランデ店でのストライキを実力で解除した。

(2) 原告組合は、右被告の行為により争議権を侵害された。

(二)(1) 原告原は、二月二七日午後二時四〇分ころ、団体交渉要求のためグランデ店を訪れたところ、会社臨時従業員約三〇名が、グランデ店七階において、原告原を取り囲み、電気を消したうえで同原告の臀部を蹴る等の暴行を加え、もって、原告組合の団体交渉の要求を妨害した。

(2) また、翌二月二八日午後一時ころ、支援労働者の原告秋山が、グランデ店一階にいた同店店次長訴外佐藤克明に団体交渉要求書を手渡そうと同店内に立ち入ったところ、会社臨時従業員らは、原告秋山につかみかかり、その場に転倒させたうえ、暴力をもって右店外に排除し、もって、原告組合の団体交渉の要求を妨害した。

(3) 原告組合は、会社臨時従業員の右(1)及び(2)の各行為により、団体交渉権を侵害され、また、原告原は、同(1)の暴行により、通院五日間を要する臀部打撲症の傷害を負った。

(三)(1) 会社臨時従業員約二二名は、二月二八日午後六時三〇分ころ、帰宅途中の原告組合員らに対し、「左翼せん滅」等のシュプレヒコールを大声であげながらグランデ店からお茶の水駅まで付きまとい、右原告組合員らを脅迫した。

(2) 右会社臨時従業員の行為により、原告組合員らは畏怖し、原告組合は、組合活動の停滞を余儀なくされた。よって、原告組合は、右会社臨時従業員の行為により組合活動を妨害された。

(四)(1) 会社臨時従業員約二五名は、三月一日午後零時三〇分ころ、ストライキ中のブックマート店に押しかけ、無理矢理店内に押し入ろうとして原告組合員に脅迫を加え、また、同日午後五時五〇分ころにも、ほぼ同数の会社臨時従業員が、ストライキ中のブックマート店に押しかけ、原告組合員に対し、大声で威嚇を加えた。

(2) 原告組合は、右会社臨時従業員の行為により、争議権を侵害された。

(五)(1) 会社臨時従業員七名は、三月二日午後三時一五分ころ、支援労働者の原告大藪の職場である小売書店株式会社信山社(以下「信山社」という。)に押しかけ、「大藪を出せ。せん滅してやる。」などと原告大藪を脅迫した。

(2) また、会社臨時従業員らは、四月一二日以降ほぼ連日にわたり、信山社に押しかけ、「大藪を出せ。」等と大声を出して原告大藪を脅すとともに、同社のショーウインドーに「大藪さん好きよ。」、「大藪君てとっても素適。今度一緒にお茶でも飲もうよ。」、「俺は神田の大藪だ。」、「俺はゴキブリが好きだけどゴキブリじゃない。」、「俺は神田の神様(或いは王様)だ。」などのステッカーを貼って、原告大藪に対して嫌がらせを繰り返した。

(3) 原告大藪は、右会社臨時従業員らの行為により、名誉を毀損されるとともに、多大の迷惑を被った。

(六)(1) 会社臨時従業員らは、三月二日午後五時五〇分ころ及び翌三月三日、グランデ店前に抗議行動に赴いた原告組合員らに対し、ごみをぶちまけたり、或いはホースで水をかけるなどの嫌がらせを行なった。

(2) 原告組合は、右会社臨時従業員らの行為により、組合活動を妨害された。

(七)(1) 原告組合員らが、三月六日午後一時四〇分ころ、グランデ店前で、マイクを使用して情宣行動を行なっていたところ、会社臨時従業員約一〇名が、歩道幅一杯に広がり、肩を組み、右情宣行動中の原告組合員ら目掛けて突入し、その際、逃げ遅れた原告組合員の原告佐々木を取り囲み、同原告を蹴りつけ、その場に横転させ、更に、足蹴にする等の暴行を加えた。

(2) 更に、会社臨時従業員約二〇名は、同日午後一時五〇分ころ、グランデ店前に赴こうとした支援労働者らにも襲いかかり、その際、原告山本、同和田及び同三田義樹に対し、足蹴にするなどの暴行を加えた。

(3) 右会社臨時従業員らの暴行により、原告佐々木は通院加療一週間を要する左大腿部及び右背部打撲症の、原告山本は通院加療一週間を要する右大腿部下腿部及び足関節打撲症兼右下腿擦過創の、原告和田は通院加療一週間を要する両下腿打撲症及び右下腿擦過創の、原告三田義樹は通院加療一週間を要する左下腿打撲擦過創の各傷害を負い、また、原告組合も、組合活動を妨害された。

(八)(1) 会社臨時従業員約二〇名は、三月七日午後一時五〇分ころ、グランデ店前で、マイクを使用して抗議、情宣行動を行なっていた原告大藪に襲いかかり、足蹴にするなどの暴行を加えた。

(2) 原告大藪は、右会社臨時従業員らの暴行により、通院加療三日間を要する左下腿打撲擦過創の傷害を負った。

(九)(1) 会社臨時従業員である訴外橋本秀昭は、三月八日午後三時三〇分ころ、ストライキ中のブックマート店を訪れ、原告組合員らに対し、「右翼暴力団と規定された以上は、その通りにやってやる。」などと申し向け、脅迫した。

(2) 右橋本の脅迫行為により、ストライキ参加中の原告組合員らは畏怖し、その結果、原告組合の組合活動は停滞するところとなった。よって、原告組合は、右橋本の行為により、組合活動を妨害された。

(一〇)(1) 会社臨時従業員約二〇名は、三月八日午後六時三〇分ころ、抗議行動のためグランデ店に赴こうとしていた原告組合員らに対し、歩道幅一杯に阻止線を張ってグランデ店に近付けないようにしたうえ、会社臨時従業員斉藤滋寿の笛を合図に、一斉に原告組合員らに襲いかかり、その際、原告前田に対し、顔面を殴打する等の暴行を加えた。

(2) 右会社臨時従業員らの行為により、原告前田は、全治一週間を要する口内裂傷の傷害を負い、また、原告組合は、組合活動を妨害された。

(一一)(1) 会社臨時従業員約一五名は、三月一〇日午後六時二〇分から三〇分にかけて、抗議行動のためグランデ店に赴こうとしていた原告組合員及び支援労働者らに襲いかかり、その際、原告流川に対しその陰部を蹴り上げる等の、原告山本に対しその左肩甲骨下に回し蹴りを加え、左胸部、左肩部、頭部を手拳で殴打する等の、原告林に対しその胸部に回し蹴りを加える等の各暴行を働いた。

(2) 右会社臨時従業員の行為により、原告流川は全治一週間を要する左手背打撲及び陰部打撲の、原告山本は全治四週間を要する左第三、第五肋骨骨折の、原告林は加療一週間を要する胸部打撲及び左下肢打撲の各傷害を負い、また、原告組合は、組合活動を妨害された。

(一二)(1) 会社臨時従業員約一八名は、三月一一日年前一一時五分ころから約一〇分間にわたり、ストライキ中のブックマート店に隊列を組んで突入し、逃げる原告組合員を追いかけまわすなどの脅迫行為を繰り返した。

(2) 原告組合は、右会社臨時従業員らの行為により、争議権を侵害された。

(一三)(1) 会社臨時従業員約一七名は、三月一五日午後六時一〇分ころ、情宣、抗議行動のためグランデ店に赴こうとしていた原告組合員らに襲いかかり、その際、原告笠原に対しその背中に肘打ち等の、原告佐々木に対しその髪を引っ張る等の各暴行を加えた。更に、右会社臨時従業員約一七名は、同日午後六時三〇分ころ、グランデ店前に行くことを諦めブックマート店方向へ戻ろうとしていた前記原告組合員らに再度襲いかかり、その際、原告野中保夫に対しその右下脚部及び大腿部を足蹴にし、胸部を膝蹴りする等の、原告笠原に対しその顔面、右頸部、右上腕部を殴打し、両大腿部を足蹴にする等の、原告笹倉に対しその左足関節部を足蹴にする等の、原告佐々木に対しその臀部及び右大腿部を足蹴にする等の各暴行を働いた。

(2) 右会社臨時従業員の行為により、原告野中保夫は全治一週間を要する胸部打撲の、原告笠原は加療二週間を要する頸部、右上腕及び両大腿打撲の、原告笹倉は全治二週間を要する左足関節部打撲傷の、原告佐々木は全治一週間を要する臀部打撲傷の各傷害を負い、また、原告組合は、組合活動を妨害された。

(一四)(1) 訴外斉藤滋寿、高橋一己、松島成佳ら会社臨時従業員約一六名は、四月七日午後一時ころから二時五〇分ころまでの間、グランデ店前で顧客等に対しビラ撒き情宣行動中の原告組合員らに対し、突き飛ばして転倒させる、取り囲んで足蹴にする、立ちはだかってすごむ等の暴行及び嫌がらせを繰り返した。

(2) 原告組合は右会社臨時従業員らの行為により、組合活動を妨害された。

(一五)(1) 訴外斉藤滋寿、高橋一己ら会社臨時従業員一〇数名は、四月八日午後一時ころから二時五〇分ころまでの間、前日と同様グランデ店前で情宣行動中の原告組合員及び支援労働者らに襲いかかり、その際、原告秋山に対し突き飛ばしたり、その陰部を蹴り上げる等の、原告木村に対しその胸部を足蹴にする等の各暴行を加えた。

(2) 右会社臨時従業員らの行為により、原告秋山は全治一週間を要する陰茎打撲及び包皮切創(五針縫合)の、原告木村は二週間の安静加療を要する左前胸部打撲の各傷害を負い、また、原告組合は、組合活動を妨害された。

(一六)(1) 訴外斉藤滋寿、高橋一己、松島成佳ら会社臨時従業員約一六名は、四月八日午後三時五五分ころ、ストライキ中のブックマート店に赴き、同店舗の二か所の入口から同時に店内に乱入して逃げ場を封じたうえ、同店舗内にいた原告組合員及び支援労働者らに襲いかかり、その際、原告野中保夫に対しその腹部を蹴り上げたり、鼻を手拳で突く等の、原告原に対しその胸部を殴る蹴る等の、原告中村に対し転倒させたうえその頭部を足蹴にする等の、原告三田敬に対しその陰部を蹴り上げる等の各暴行を加えるとともに、原告組合所有のハンドマイク三台のコードをペンチで切断した。

(2) 右会社臨時従業員らの行為により、原告野中保夫は安静加療一〇日間を要する鼻骨骨折の、原告原は通院加療一週間を要する左胸部打撲症及び左肩打撲症の、原告中村は全治三週間を要する頭部外傷の、原告三田敬は左睾丸内出血、陰嚢内出血及び亀頭部皮下出血の各傷害を負い、また、原告組合は、争議権を侵害されるとともに、前記ハンドマイク三台を修理するため一万六二〇〇円の支出を余儀なくされた。

(一七)(1) 会社臨時従業員約一五名は、四月九日及び一〇日の二度にわたり、ストライキ中のブックマート店に押しかけ、梯子を使用し、同店舗外壁面に「今、僕たちは働かないで権利だけを主張する乳離れしていない精神的未熟児ゴキブリ集団です。」、「真の労働者とは、貯金に仕事に親孝行 これが男の生きる道、昔は親のスネカジリ、今は会社のスネカジリ」と大きく書いたステッカーを貼った。

(2) 原告組合は、右会社臨時従業員らの行為により、著しく名誉を毀損された。

(一八)(1) 訴外斉藤滋寿ら会社臨時従業員約一五名は、四月一〇日午後六時すぎころ、ストライキ中のブックマート店に押し入った。これに対し、原告組合員らは、難を避けるため店舗外に退避したが、右会社臨時従業員らは、退避した原告組合員らに付きまとい、右会社臨時従業員らの違法行為を写真撮影しようとした原告組合員の行為を妨害したり、或は、原告組合所有のハンドマイクをペンチで切断する等の嫌がらせを行なった。

更に、右会社臨時従業員らは、同日午後六時二五分ころ、ブックマート店を出てお茶の水駅方向に帰途についていた原告組合員らに対しても付きまとい、「このあとどこへ行くんだ。」、「お前たち共同生活をしているのか。」等の言葉を浴びせて嫌がらせを繰り返した。

(2) 原告組合は、右会社臨時従業員らの行為により、争議権、所有権及び組合活動(その内容は前記(三)(2)のとおり)をそれぞれ侵害された。

(一九)(1) 会社臨時従業員らは、四月一一日午後三時すぎころから約二〇分間にわたり、ストライキ中のブックマート店に押し入ったうえ、同店入口ドアー付近で顧客に対しストライキへの協力を訴えていた原告組合員に対し、「正面の眼鏡の男は何というんだ。太田薫のようにしてやりたい。」等申し向けて脅迫し、また、無理矢理顧客を店内に引き込もうとし、その際、故意に原告組合員を突き飛ばしたり、足を踏みつける等の暴行を加えた。

(2) また、訴外松島成佳、秋山義憲ら会社臨時従業員約一六名は、四月一一日午後五時三〇分ころ及び同六時ころにも、ストライキ中のブックマート店に押し入り、その際、原告原に対し、訴外松島ら約五名で取り囲み蹴飛ばす等の暴行を加えたうえ、同原告所有のカメラ一台(時価一一万円相当)を奪って、これを路上に叩きつけて損壊し、その他の原告組合員らに対してもペンチで臀部をつねり上げたり、髪の毛を引っ張ったり、押し倒して蹴飛ばす等の暴行を加え、また、原告組合員(女子)の手からビラを奪って、これをあたりにまき散らし、原告組合所有のハンドマイクのコードを引きちぎって損壊するなどした。

(3) 右会社臨時従業員らの行為により、原告原は、暴行を受けるとともに、前記カメラを修理不可能な状態に損壊され、また、原告組合は、争議権及び所有権を侵害された。

(二〇)(1) 訴外斉藤滋寿、秋山義憲ら会社臨時従業員約一六名は、四月一二日午後二時二五分ころ、ストライキ中のブックマート店に押し入り、たまたま便所に入っていて逃げ遅れた原告笹倉に対し、訴外斉藤、秋山ら会社臨時従業員四、五名が襲いかかり、同原告の左腕をねじ上げ、足を蹴り、頭部を手拳で殴打する等の暴行を加えるとともに、同原告所有のカメラ一台(時価一一万〇二〇〇円相当)を奪い、これを床に叩きつけた。

(2) 右会社臨時従業員らの行為により、原告笹倉は通院加療一〇日間を要する頭部及び右大腿部打撲症、左前腕打撲擦過傷、左手打撲症の傷害を負わされるとともに、前記カメラ一台を修理不能な状態に損壊され、また、原告組合も、争議権を侵害された。

(二一)(1) 会社臨時従業員三〇数名は、四月一三日午前一〇時三〇分ころから、ストライキ中のブックマート店付近にたむろし、原告組合員らを同店舗に近付けないようにさせたうえで、実力で原告組合の右店舗でのストライキを解除した。

(2) 原告組合は、右会社臨時従業員らの行為により、争議権を侵害された。

(二二)(1) 訴外松島成佳ら会社臨時従業員らは、四月一三日午後零時一二分ころ、グランデ店前で抗議行動を行なうためブックマート店方向からグランデ店に向かって移動中の原告組合員らに対し、両店舗間の途中にある三省堂書店前付近の歩道上に長椅子を並べて原告組合員らがグランデ店に近づくのを阻止し、また、同日午後一時ころになって原告組合員らがグランデ店前に行くことを諦め、ブックマート店方向へ戻ろうとするや、今度はその進行方向に長椅子を持ち出して原告組合員らが移動するのを阻止し、合計二時間以上にわたって原告組合員らの行動を拘束した。

そして、会社臨時従業員の松島成佳は、右のとおり原告組合員らを拘束中、原告組合員の傍にいた支援労働者の原告山本に対し、その顔面に頭突きを加える等の暴行を働いた。

(2) また、会社臨時従業員らは、四月一三日午後一時四〇分ころ、ブックマート店のすずらん通り側入口付近でビラ撒き情宣行動をしていた原告組合員らに襲いかかったが、その際、これを止めに入った支援労働者の原告大久保に対し、その顔面を手拳で殴打する等の暴行を加えた。

(3) 右会社臨時従業員らの行為により、原告山本は安静加療一週間を要する鼻骨骨折(整復術施行)の、原告大久保は安静加療一週間を要する鼻骨骨折(整復術施行)の各傷害を負い、また、原告組合は、組合活動を妨害された。

(二三)(1) 会社臨時従業員らは、四月一四日から四月末日ころにかけて、ブックマート店のショーウインドーに、畳一畳分位の模造紙に、「みなさま長らく御迷惑をおかけしましたが、害虫退治が終りましたので平常に営業しております。尚ゴキブリストライキ集団は安心してブックマートで二年でも三年でもストを続けて下さい。お客様に迷惑をかけちゃだめよ。」と大書きした貼り紙を掲示した。

(2) 原告組合は、右会社臨時従業員らの行為により、著しく名誉を毀損された。

(二四)(1) 被告は、原告組合員を原告組合から脱退させ、又は被告から退職させる目的で、四月末日ころ、原告組合員全員の身元保証人宛に、争議経過を一方的に歪曲し、組合の争議によって生じた損害を身元保証人に請求する旨記載した内容証明郵便を送付したうえ、五月初めから、会社臨時従業員を使用して、原告組合員の自宅や身元保証人宅に、再三にわたり、電話で、原告組合やその組合員について、「組合を支援している者らは、成田の暴力団と付き合っている。」、「組合は、社長の自宅周辺に『社長を殺す』とか『爆弾を仕掛けた』などのステッカーを貼っている。」、「本人は過激派と一緒に生活している。知らないのは親だけだ。」などの虚構の事実を申し向けるとともに、「組合の争議行為によって会社は一億数千万円(或いは「数億」)の損害を受けている。これは身元保証人に賠償してもらう。」と申し向けたうえで、「本人を退社させれば(或いは「組合をやめさせれば」)損害賠償は請求しない。」、「既に多数の者が組合をやめているから本人もやめさせたらどうか。」などと、組合員を原告組合から脱退させ、又は被告から退社させることを執拗に迫った。

更に、会社臨時従業員は、いずれも、原告組合員を原告組合から脱退させ、又は被告から退職させる目的で、次の(2)のないしのとおり、五月ころから八月ころにかけて、原告組合員の自宅や実家の周辺に対し、組合員の顔写真に「極左暴力集団」、「過激派の情婦」等と書き込んだビラを貼り付けたり、宣伝カーで押しかけてマイクで原告組合員の悪口雑言をがなりたてる等の悪質な嫌がらせを繰り返した。

(2)  原告前田に対する嫌がらせ

会社臨時従業員は、五月九日ころ、原告前田が当時居住していた品川区《番地省略》○○荘周辺の電柱、掲示板など約一〇か所に、同原告の顔写真を配し「左翼暴力団」と記載したステッカー及び「左翼暴力団」とのみ記載したステッカー合計約二五枚を貼付した。

また、会社臨時従業員らは、七月二二日ころから同月二四日ころまでの間、原告前田が居住していた前記○○荘周辺の商店街沿いの電柱、掲示板、壁など約三〇か所ないし四〇か所に、同原告の顔写真を配し「自称革労協活動家撃滅 前田隆承」と記載したステッカー合計約一五〇枚を貼付した。

更に、会社臨時従業員らは、八月一一日早朝、富山県黒部市生地の原告前田の実家付近の県道沿いの電柱、学校の壁、公園内の施設などに、同原告の顔写真を配し、「自称革労協活動家センメツ前田隆承」、「生地の恥さらし 本屋の息子 前田隆承」又は「成田の過激派撃滅 前田隆承」と記載した三種類のステッカー合計約二〇〇枚ないし三〇〇枚を貼付した。

このような度重なる会社臨時従業員らの嫌がらせの結果、原告前田は、後記(3)のとおり、昭和五六年五月一日、被告を退社した。

原告野中保夫、同野中知子に対する嫌がらせ

会社臨時従業員らは、三月四日午後八時ころ、原告野中保夫、同野中知子夫妻の自宅に押しかけ、玄関ドアに「死刑!!バカ、首を洗って待ってろ、野中センメツ!!」との落書きをし、玄関ドアの鍵穴にボンドをつめて開かなくし、更に、ベランダの窓ガラスに鶏卵約二〇個を投げつけた。

会社臨時従業員らは、翌三月五日早朝にも、前記原告野中夫妻自宅付近の電柱に「野中は会社もアパートも板橋からも出て行け。」等の内容のビラを貼った。

会社臨時従業員らは、五月二〇日ころ、前記原告野中夫妻自宅付近の電柱、壁、自動販売機などに、原告野中知子の顔写真を配し「神田の尻軽女 娼婦野中知子 センメツするぞ」と記載したステッカー合計約八〇枚を貼付した。

更に、会社臨時従業員らは、七月一九日早朝、前記原告野中夫妻自宅周辺の電柱、自動販売機、塀、掲示板などに、原告野中保夫の顔写真を配し、「左翼過激派追放、清水町アジトの責任者野中保夫」と記載したステッカー一四八枚を貼付したうえ、右両原告の自宅付近に金魚、鮒の死骸合計二〇匹余りを入れたビニール袋を放置した。

会社臨時従業員らは、七月二〇日早朝、同月二一日早朝及び同月二四日早朝にも、前記原告野中夫妻自宅付近の電柱等に、原告野中保夫の顔写真を配し前記と同種の文言を記載したステッカー合計約三四〇枚を貼付したり、右原告自宅付近の歩道橋及び高速道路の各橋脚部など四〇数か所に、赤色カラースプレーで「革労協野中保夫 センメツするぞ」等と落書きをした。

原告組合員訴外立川和代に対する嫌がらせ

会社臨時従業員らは、五月二〇日ころ、千葉県流山市松ヶ丘の原告組合員訴外立川和代の実家周辺の電柱、掲示板などに、同人の顔写真を配し、「左翼過激派の情婦立川和代を放逐するぞ。5・20葬送協会 立川和代班」又は「神田の尻軽女 立川和代」と記載した二種類のステッカー合計約二〇枚ないし四〇枚を貼付した。

原告組合員訴外石川淑子に対する嫌がらせ

会社臨時従業員らは、五月中旬から下旬にかけて静岡県三島市幸原町の原告組合員訴外石川淑子の実家周辺の電柱、壁、掲示板、商店のウインドーなどに、同人の顔写真を配し「左翼暴力団追放 石川淑子」と記載したステッカー約三〇〇枚を貼付するとともに、同人の実家付近の路上や壁面約二〇か所に、青色カラースプレーで右同様の文言の落書きをした。

原告組合員訴外渡部智子に対する嫌がらせ

会社臨時従業員らは、五月二一日、江戸川区平井の原告組合員訴外渡部智子の実家周辺の電柱、自動販売機、看板などに、同人の顔写真を配したステッカー約一〇〇枚を貼付した。

また、会社臨時従業員らは、五月二三日午後一時四〇分ころから約八分間及び五月二八日午後一時四八分ころから約三分間、前記渡部の実家に街頭宣伝車(車体の右前部ドアーに日の丸を配し、その下に新生亜細亜青年集団と記載し、車体後部に天地社と記した装甲車両)を乗りつけ、マイクで「渡部智子は出てこい。」、「和泉屋の娘渡部智子は極左暴力団に属している。このような者を平井の町から追放しよう。」などと怒号しながら、右渡部の自宅周辺を徘徊した。

会社臨時従業員四名は、五月二九日午後一時一〇分ころ、前記渡部の実家にジープを乗りつけ、右ジープを約三〇分間にわたり右渡部の実家前に駐車させ、渡部の父公雄の「この狭い道路で何故駐車するのか。あんたたちは神田から来たのだな。」との抗議に対し、「娘が何をやっているのか知っているのか。あいつらは極左暴力集団に属しているんだ。働かないで金を欲しいと言っているんだ。」などと申し向ける等の嫌がらせを行なった。

更に、会社臨時従業員は、五月二九日午後二時二〇分ころ、前記渡部の実家に電話をし、渡部の父公雄に対し「お宅の娘は極左暴力集団に属して暴力行為を一五〇日間もやっている。娘も娘なら、親も親だな。よく監視しておけ。プロとしてやるのなら、また話は別だ。」などと申し向ける等の嫌がらせを行なった。

原告組合員訴外堀江達也に対する嫌がらせ

会社臨時従業員らは、七月一八日の深夜から翌一九日早朝の間、同月二〇日早朝、同月二一日早朝及び同月二三日早朝と前後四回にわたり、足立区保木間の原告組合員訴外堀江達也の実家周辺の電柱、看板、塀などに、同人の顔写真を配し「左翼暴力団追放 堀江達也」と記載したステッカー合計約二〇〇枚を貼付したほか、同人の自宅付近の陸橋階段、同橋脚部及び建築現場のトタン塀等に、赤色カラースプレーで「革労協 堀江達也死刑」などと落書きをした。

このような度重なる会社臨時従業員らの嫌がらせの結果、原告組合員であった堀江達也は、後記(3)のとおり、七月二四日に被告を退社した。

原告組合員訴外長尾明子に対する嫌がらせ

会社臨時従業員らは、七月二三日早朝及び同月二五日早朝の二回にわたり、横浜市戸塚区平戸町の原告組合員訴外長尾明子の実家周辺の電柱、ガードレールなどに、同人の顔写真を配し、「過激派左翼の娼婦尻軽女 長尾明子センメツ」又は「革労協活動家 長尾明子処刑」と記載したステッカー合計約三三〇枚を貼付したほか、右実家付近の路上、ブロック塀、ガードレール、掲示板など合計数十か所に、赤色カラースプレーで「極左革労協 長尾明子センメツ」、「革労協 長尾明子死刑」などと落書きをした。

原告原に対する嫌がらせ

会社臨時従業員らは、八月九日午前一時から三時ころまでの間、長野県上水内郡信濃町大字大井の原告組合員原告原の実家周辺の電柱、壁などに、同原告の顔写真を配し、「成田の過激派撃滅 富ヶ原支部赤 原雄次」又は「信濃町の恥曝し 革命的労働者協会 原雄次」と記載した二種類のステッカー合計約一五〇枚を貼付した。

原告組合執行委員長訴外関口武男に対する嫌がらせ

会社臨時従業員らは、八月一一日深夜から翌一二日早朝にかけて、新潟県十日町市住吉町の原告組合執行委員長訴外関口武男の実家付近の県道沿いの電柱、壁などに、同人の顔写真を配し、「革命的労働者集団十日町支部(関口武男) 抗議先 高田住吉町関口商会」又は「成田の過激派撃滅(関口武男) 抗議先 高田住吉町関口商会」と記載した二種類のステッカー合計約一〇〇枚ないし二〇〇枚を貼付した。

(3) 右(1)及び(2)の被告及び会社臨時従業員らの行為により、原告前田、同野中保夫、同野中知子、同原は脅迫されるとともに名誉を著しく毀損され、また、原告組合は、次のとおり組合の維持、存立(団結権)上多大の損害を被った。

すなわち、五月二四日に原告組合員相馬ふみ子が、七月二四日には原告組合員堀江達也が、その後も原告組合員小幡一彰、前田隆承、野川愛智、海東美津子、黒沢節子、山脇道子らが次々と被告を退職し、原告組合から脱退したが、これに至らない場合も、全組合員が、家族、身元保証人、近隣住民との人間関係の悪化を強いられ、原告組合に留まるか否かの岐路に立たされ、原告組合の団結に大きな障害を与えられた。

4  被告の責任

被告は、自らの意思をもって会社臨時従業員らに前記3記載の不法行為をなさしめたものであり、また、被告は、臨時従業員が前記3記載のような不法行為に出ることを労務の内容としてこれらの者を雇用したものであるから、民法七〇九条、七一九条、七一五条により、右不法行為によって原告らが被った後記5の損害を賠償する義務がある。

5  原告らの損害

原告らは、前記3記載の各不法行為により以下の損害を被った。

(一) 原告組合 合計三〇〇万円

原告組合は、前記のとおり、被告又は被告の雇用した会社臨時従業員らの、前記3(二四)記載の行為により団結権を、同3(二)記載の行為により団体交渉権を、同3の(三)、(六)ないし(一一)、(一三)ないし(一五)、(一八)、(二二)各記載の行為により組合活動を、同3の(一)、(四)、(一二)、(一六)、(一八)ないし(二一)各記載の行為により争議権を、同3の(一七)、(二三)、(二四)(1)各記載の行為により名誉を、同3の(一六)、(一八)、(一九)各記載の行為により所有権を、それぞれ侵害された。

そして、原告組合の被った右有形、無形の各損害を合算すれば、三〇〇万円を下らない。

(二) 原告原 合計四七万六七八〇円

原告原は、前記3の(二)、(一六)、(一九)、(二四)(2)各記載の暴行、嫌がらせ等を受けたことにより左の損害を被った。

(1) 治療費及び診断書作成料 一万六七八〇円

(2) カメラを毀損されたことによる損害 一一万円

(3) 慰藉料 三五万円

(三) 原告野中保夫 合計七九万四一二〇円

原告野中保夫は、前記3の(一三)、(一六)、(二四)(2)各記載の暴行、嫌がらせ等を受けたことにより左の損害を被った。

(1) 治療費及び診断書作成料 四万四一二〇円

(2) 慰藉料 七五万円

(四) 原告野中知子 合計二五万円

原告野中知子は、前記3の(二四)(2)記載の嫌がらせ等を受けたことにより左の損害を被った。

慰藉料 二五万円

(五) 原告佐々木 合計四〇万四一〇〇円

原告佐々木は、前記3の(七)、(一三)各記載の暴行を受けたことにより左の損害を被った。

(1) 治療費及び診断書作成料 四一〇〇円

(2) 慰藉料 四〇万円

(六) 原告前田 合計二〇万一六〇〇円

原告前田は、前記3の(一〇)、(二四)(2)各記載の暴行、嫌がらせ等を受けたことにより左の損害を被った。

(1) 治療費及び診断書作成料 一六〇〇円

(2) 慰藉料 二〇万円

(七) 原告流川 合計二〇万四四五〇円

原告流川は、前記3の(一一)記載の暴行を受けたことにより左の損害を被った。

(1) 治療費及び診断書作成料 四四五〇円

(2) 慰藉料 二〇万円

(八) 原告笠原 合計四〇万一〇〇〇円

原告笠原は、前記3の(一三)記載の暴行を受けたことにより左の損害を被った。

(1) 診断書作成料 一〇〇〇円

(2) 慰藉料 四〇万円

(九) 原告笹倉 合計八一万四四〇〇円

原告笹倉は、前記3の(一三)、(二〇)各記載の暴行等を受けたことにより左の損害を被った。

(1) 治療費及び診断書作成料 四二〇〇円

(2) カメラを毀損されたことによる損害 一一万〇二〇〇円

(3) 慰藉料 七〇万円

(一〇) 原告大藪 合計二〇万一六〇〇円

原告大藪は、前記3の(五)、(八)各記載の暴行、嫌がらせ等を受けたことにより左の損害を被った。

(1) 治療費及び診断書作成料 一六〇〇円

(2) 慰藉料 二〇万円

(一一) 原告山本 合計一二四万〇四八〇円

原告山本は、前記3の(七)、(一一)、(二二)各記載の暴行を受けたことにより左の損害を被った。

(1) 治療費及び診断書作成料 四万〇四八〇円

(2) 慰藉料 一二〇万円

(一二) 原告和田 合計二〇万一六〇〇円

原告和田は、前記3の(七)記載の暴行を受けたことにより左の損害を被った。

(1) 治療費及び診断書作成料 一六〇〇円

(2) 慰藉料 二〇万円

(一三) 原告三田義樹 合計二〇万一六〇〇円

原告三田義樹は、前記3の(七)記載の暴行を受けたことにより左の損害を被った。

(1) 治療費及び診断書作成料 一六〇〇円

(2) 慰藉料 二〇万円

(一四) 原告林 合計二一万一九六〇円

原告林は、前記3の(一一)記載の暴行を受けたことにより左の損害を被った。

(1) 治療費及び診断書作成料 一万一九六〇円

(2) 慰藉料 二〇万円

(一五) 原告秋山 合計二一万二八二〇円

原告秋山は、前記3の(一五)記載の暴行を受けたことにより左の損害を被った。

(1) 治療費及び診断書作成料 一万二八二〇円

(2) 慰藉料 二〇万円

(一六) 原告木村 合計四〇万三六〇〇円

原告木村は、前記3の(一五)記載の暴行を受けたことにより左の損害を被った。

(1) 治療費及び診断書作成料 三六〇〇円

(2) 慰藉料 四〇万円

(一七) 原告中村 合計六四万七八四〇円

原告中村は、前記3の(一六)記載の暴行を受けたことにより左の損害を被った。

(1) 治療費及び診断書作成料 四万七八四〇円

(2) 慰藉料 六〇万円

(一八) 原告三田敬 合計二〇万八九二〇円

原告三田敬は、前記3の(一六)記載の暴行を受けたことにより左の損害を被った。

(1) 治療費及び診断書作成料 八九二〇円

(2) 慰藉料 二〇万円

(一九) 原告大久保 合計二〇万三六〇〇円

原告大久保は、前記3の(二二)記載の暴行を受けたことにより左の損害を被った。

(1) 治療費及び診断書作成料 三六〇〇円

(2) 慰藉料 二〇万円

6  結論

よって、原告らは、被告に対し、不法行為に基づき、それぞれ別紙原告請求金額一覧表の「請求損害金額」欄及び「遅延損害金額」欄記載の各金員の支払いを求める。

二  請求原因に対する認否

1(一)  請求原因1(一)の事実のうち、被告の従業員数は否認し、その余は認める。

被告の従業員数は一一六名(内、正従業員九七名、準従業員二名、パートタイマー一七名)であった。

(二) 同1(二)の事実は認める。

(三) 同1(三)の事実のうち、別紙原告請求金額一覧表の原告番号2ないし10及び15記載の各原告の地位は認めるが、その余の原告の地位は知らない。

2(一)  同2(一)の事実は認める。

(二) 同2(二)の事実のうち、被告が原告組合の両店舗での無期限ストライキを排除し、両店舗での営業を再開するため会社臨時従業員(約五〇名)を雇用したことは認めるが、原告組合の組織破壊の目的で雇用したことは否認し、会社臨時従業員の身分関係については知らない。

3(一)  同3前文の事実は否認する。

(二) 同3(一)の事実のうち、(1)は、被告がグランデ店前にいた原告組合員に対しブックマート店で就労するよう申し向けるとともにグランデ店より退去するよう求めたことは認めるが、その余は否認し、(2)も否認する。

(三) 同3の(二)ないし(二〇)の各事実はいずれも知らない。

(四) 同3(二一)の事実のうち、(1)は、四月一三日に原告組合のブックマート店でのいわゆるピケストを解除したことは認めるが、その余は知らない。(2)も知らない。

(五) 同3の(二二)及び(二三)の各事実はいずれも知らない。

(六)(1) 同3の(二四)(1)の事実のうち、被告の行為については、被告が内容証明郵便を送付したことは認めるが、その余は否認する。会社臨時従業員の行為については知らない。

(2) 同3(二四)(2)のないしの各事実はいずれも知らない。

(3) 同3(二四)(3)の事実のうち、原告組合員相馬ふみ子、堀江達也、小幡一彰、前田隆承、野川愛智、海東美津子、黒沢節子、山脇道子が被告を退職したことは認めるが、その余は知らない。

なお、右原告組合員らは、一身上の都合で退職したのであり、本件不法行為とは何ら関係がない。

(七) 原告らの行為は、後記三のとおり組合自体としても、また、労働者個人としても違法な行為である。したがって、被告又は会社臨時従業員らの行為により原告らに被害が生じたとしても、右行為は不法行為とはならない。

4  同4ないし6の主張及び事実はすべて争う。

三  抗弁(正当防衛)

仮に原告らの本件被害が被告又は被告の雇用した会社臨時従業員らの行為に起因するとしても、被告らの行為は、次の1ないし4記載のとおり原告らの違法行為に対し必要やむを得ず採られたもので、正当防衛である。

1  原告組合は、昭和五三年三月六日ころから、被告との間で賃金値上げ等の交渉を重ねていたが、交渉は、合意に至らなかった。そこで、原告組合は、昭和五三年四月六日から同年一一月二一日までの間に、ブックマート店で一三二日、グランデ店で一三五日、ピケストと称して、半日又は全日にわたり、店舗の入口を塞ぎ、顧客の入店を阻止する行動をとった。そして、原告組合は、昭和五三年一一月二二日からは、戦術を強化し、両店舗で、無期限のピケスト行動をとった。このため、被告の店舗内営業は完全に不能となった。

2  原告組合の前記1の行為は、店内書籍販売を主たる業務とする被告に対し、顧客の入店を長期間にわたって完全に阻止するものであり、違法な争議行為である。そして、このまま、原告組合の違法な行為を放置すれば、被告は倒産の危険に立ち至るおそれがあった。

そこで、被告は、その存立と従業員の職場と生活を確保するため、昭和五四年二月下旬ころ、会社臨時従業員約五〇名を雇用し、前記原告組合のピケストを排除し、両店舗での営業を再開することにした。

3  そして、被告は、昭和五四年二月二七日グランデ店、同年四月一二日ブックマート店でそれぞれ原告組合の前記違法なピケストを排除し、営業を開始した。

これに対し、原告組合は、再三にわたり、組合員及び支援労働者ら多衆の力をもって、再び両店舗での前記違法なピケストなどの続行を企て、職場奪還、不買を叫びつつ両店舗に押しかけてきた。そこで、被告は、右原告組合、原告組合員及び支援労働者らの違法行為を排除しなければ、再び店内書籍販売を行なうことが不可能になることが明白であったので、やむを得ず原告組合員及び支援労働者らを両店舗から排除した。

4  そして、原告らが請求原因3で主張する被害は、そのほとんどが、右被告の正当な排除行為の際発生したものであるから、被告には何ら責任がない。

四  抗弁に対する認否

抗弁事実はすべて争う。

第三証拠《省略》

理由

一  認定に供した書証の成立について《省略》

二  当事者等について

《証拠省略》によれば、次の1ないし3の各事実が認められる。

1  被告は、書籍雑誌の販売等を目的とする会社であり、肩書住所地にグランデ店を、千代田区神田一丁目二一番地にブックマート店を開設し、書籍雑誌の小売販売業務を行なっている(以上の事実は、当事者間に争いがない。)。

2  ところで、被告では、昭和五一年一一月二〇日、正従業員一四名、パートタイマー五名をもって、原告組合が結成された。そして、昭和五四年三月当時の原告組合の構成員は、正従業員一八名、パートタイマー一〇名(合計二八名)であった(昭和五四年三月当時の原告組合の構成は、当事者間に争いがない。)。

他方、被告では、原告組合結成約一か月後の昭和五一年一二月一六日ころ、正従業員を構成員とする書泉社員会が結成され、右社員会は、同五二年一一月八日ころ、全書泉労働組合(以下「全書泉」という。)に改組され、日本出版労働組合連合会(以下「出版労連」という。)に加盟した。そして、全書泉の構成員は、本件紛争発生当時、正従業員四七名であった。

また、被告には、本件紛争当時、原告組合及び全書泉のいずれにも属さない従業員(管理職を除く。)が約二五名いた。

3  別紙原告請求金額一覧表の原告番号2ないし9記載の各原告は、いずれも原告組合の組合員であり、また、同表の原告番号10ないし19記載の各原告は、いずれも原告組合を支援する労働者をもって組織する「書泉闘争を支援する会」の構成員である(右原告番号2ないし10及び15記載の各原告の地位は、当事者間に争いがない。)

三  本件不法行為に至る経緯

《証拠省略》によれば、次の1及び2の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

1  原、被告間の労使紛争

(一)  原告組合は、昭和五三年三月六日、被告に対し、正従業員及びパートタイマーの賃金値上げ等を骨子とする一六項目にわたる一九七八年春期要求書を提出した。他方、全書泉も、昭和五三年三月一三日、被告に対し、賃金値上げ等を骨子とする一一項目にわたる一九七八年春期要求書を提出した。そして、全書泉と被告との間では、昭和五三年五月一〇日に至り、交渉が妥結した。

これに対し、原告組合と被告との間では、団体交渉に次ぐ団体交渉を重ねたが、原告組合は全書泉と被告間の前記妥結内容より更に組合側に有利な回答を求め、被告は全書泉と被告間の前記妥結内容と同一の回答しか出せないとして、歩み寄りがみられず、交渉は合意に至らなかった。

そうこうするうち、原告組合は、右春期要求と併行して、昭和五三年五月一四日には夏期要求を、同年一〇月三〇日には年末要求をそれぞれ被告に出し、交渉を重ねたが、これも、前記春期要求同様、被告は全書泉と被告間で妥結した内容と同一のものしか出せないとし、原告組合は右内容より更に組合側に有利な回答を求め、歩み寄りがみられず、交渉は合意に至らなかった。

(二)  そこで、原告組合は、右交渉を自己に有利に導くため、昭和五三年四月六日の時限ストライキを手始めとして同年一一月二一日までの間、被告営業日数二一二日のうち実にその約三分の二にあたる約一三五日にわたって断続的に時限又は全日のストライキを繰り返した。そして、原告組合は、右ストライキを実効あらしめるため、ストライキを行なった日は、グランデ店及びブックマート店の入口に次のようなピケッティング(以下このピケッティングを伴ったストライキを「ピケスト」という。)を張った。

すなわち、原告組合は、グランデ店及びブックマート店の入口ドアに「差別―分断労務政策粉砕!!」等と書いたステッカーを多数貼付したうえ、はち巻、ゼッケン、腕章等をした原告組合員及び支援労働者ら数名を両店舗の全入口に佇立させ或いは坐り込ませて気勢をあげ、もって、顧客が両店舗に入り書籍を購入するのを阻止し、また、右ピケを無視して敢えて店内に入ろうとする顧客に対しては罵声を浴びせたり、或いは立ちはだかるなどして入店を阻止した。

そして、原告組合は、昭和五三年一一月二二日からは、更に戦術を強化し、無期限のストライキを行ない、両店舗において前記のとおりのピケストを行なった。

(三)  被告は、原告組合のピケスト期間中も、両店舗に従業員を配置し、販売体制を整えていたが、原告組合のピケストのため、両店舗内での書籍雑誌の小売販売業務を行なうことができなかった。

このため、被告は、原告組合のピケストが行なわれていなかった昭和五三年一月から三月までは、月平均約一五八九万八〇〇〇円の利益をあげていたのに、前記のとおり断続的にピケストの行なわれていた同年四月から一〇月までは月平均約二六七万五〇〇〇円の損失となり、また、前記のとおり無期限ピケストの行なわれた同年一一月には一三九六万九〇〇〇円、同年一二月には三二六八万七〇〇〇円、同五四年一月には二六二二万二〇〇〇円の各損失をそれぞれ出すに至った。

(四)  そして、被告は、昭和五四年二月初めころ、取引銀行から、今後も原告組合の無期限ピケストが続き、グランデ店及びブックマート店での営業ができない状態が続くのなら、同年三月以降は融資できないと言われた。そこで、被告は、同年二月初めころ、原告組合に対し、紛争を打開するため、前記全書泉と被告間で妥結した額を上まわる額を呈示した。これに対し、原告組合は、被告に対し、更に、解決金及び謝罪文を出すように要求した。

2  会社臨時従業員の雇用

(一)  被告は前記1(四)の原告組合からの解決金及び謝罪文の要求に応ずるわけにいかず、困惑した。

丁度そのころ、訴外橋本秀昭が、被告に対し、前記原告組合のグランデ店及びブックマート店でのピケストをやめさせ、右両店舗で営業ができるよう協力したいが、被告に同人らを雇用する意思があるかどうか打診してきた。

そこで、被告のグランデ店及びブックマート店店長兼人事部長の今泉孝造が、昭和五四年二月中旬ころ、訴外橋本に会った。そして、その際、訴外橋本は、今泉孝造に対し、昭和五一年ころ新聞輸送株式会社の労働争議にからんで労働組合員に暴行を働き罰金五万円の刑に処せられた前歴があること及び被告が前記両店舗で営業できるように色々な方法を講じてやる旨話した。

これに対し、被告では、これ以上原告組合と団体交渉を続けても解決の見込みが立たなかったこと及び前記のとおり昭和五四年三月までに営業を再開しなければ取引銀行からの融資を止められ会社は倒産の危機に瀕するおそれがあったことなどから、会社の存立並びに全書泉加入の従業員及び組合非加入の従業員の職場と生活を守るために、訴外橋本の前記前歴を承知のうえで、同人らの力を借りて両店舗での営業を再開することにした。

(二)  そこで、被告は、昭和五四年二月下旬ころ、原告組合に対する労務対策及び両店舗での営業を支障なく行なうために、訴外橋本及びその推薦する者約五〇名を臨時従業員として雇用した。そして、被告は、訴外橋本ら会社臨時従業員に、原告組合に対していかなる労務対策をとるべきか、また、両店舗で営業を支障なく行なうためにはいかなる手段をとるべきかにつき、自主的に判断して行動してよい旨の権限を付与し、原告組合に対する労務対策及び両店舗の警備の一切を任せた。

四  被告及び会社臨時従業員らの原告組合、原告組合員及び支援労働者に対する行為

ところで、原告らは、請求原因3の(一)ないし(二四)記載のとおり、被告又はその雇用した訴外橋本ら会社臨時従業員らが原告らに対し不法行為を働いた旨主張するので、以下この点について判断する。

《証拠省略》を総合すれば、次の1及び2の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

1  総論

(一)  前記三2(二)のとおり被告から原告組合に対する労務対策の一切を任された訴外橋本秀昭ら会社臨時従業員は、まず、グランデ店における原告組合のピケストを排除し、同店舗での営業が支障なくできるようにすることを、当面の課題とした。

そこで、被告及び訴外橋本秀昭ら会社臨時従業員らは、グランデ店に勤務している原告組合員をブックマート店へ、また、ブックマート店に勤務している全書泉所属従業員及びいずれの組合にも属していない従業員をグランデ店へ、相互に配置換えすることにした。

そして、訴外橋本秀昭、秋山義憲、斉藤滋寿ら会社臨時従業員約五〇名は、昭和五四年二月二七日午前一一時三〇分ころ、原告組合員らが前記のとおりピケストを行なっていたグランデ店に赴き、右店舗内に入り、前記のとおりグランデ店に勤務している原告組合員はブックマート店で勤務するように命じた被告文書を読みあげた。グランデ店に勤務する原告組合員らは、右配転命令に承服したわけではなかったが、会社臨時従業員らとの混乱を回避するため、やむなくブックマート店に移動した。訴外秋山義憲、斉藤滋寿ら会社臨時従業員及び被告の人事部長今泉孝造らは、更に、昭和五四年二月二七日午後二時ころ、今度は、ブックマート店に赴き、ブックマート店に勤務している全書泉所属従業員及びいずれの組合にも属していない従業員に対し、グランデ店で勤務するように命じた。

こうして、グランデ店に勤務していた原告組合員がブックマート店に移動したため、被告は、昭和五四年二月二七日午後から、グランデ店での営業を再開した。そして、会社臨時従業員らは、原告組合員及びその支援労働者らがグランデ店の営業を妨害するのに対処するため、グランデ店の警備にあたった。また、被告は、グランデ店の営業を円滑に行なうため及び原告組合に対する労務対策を整備するため、昭和五四年三月二一日、社長室及び労務部を設け、前記会社臨時従業員のうち一〇名を正従業員として採用し、これらの者を右二部署に配置した。すなわち、被告は、社長室長に秋山義憲を、同室長代理に田中謹司を、同室次長に斉藤滋寿、佐藤信一、田口智司を、また、労務部部長に橋本秀昭を、同部次長に斉藤正行、高橋一己、高橋渉、清水健二郎をそれぞれ任命した(なお、右正従業員として採用された一〇名も、以下、従前どおり、「会社臨時従業員」と表示する。)。

(二)  これに対し、原告組合は、依然として、ブックマート店において前記三1(二)のとおりの無期限ピケストを継続するとともに、昭和五四年二月二七日から同年四月一三日ころにかけて、被告に団体交渉の申入れをしたほか、営業を再開したグランデ店に赴き、次のとおり抗議、情宣活動を行なった。

すなわち、ゼッケン、腕章、鉢巻等をした原告組合員及びその支援労働者約二〇名ないし三〇名は、大体、一日一時間程度、グランデ店前付近の歩道で、ハンドマイクにより、店内の顧客及び通行人らに対し、被告は原告組合との団体交渉を拒否し、組合つぶしのために会社臨時従業員(原告組合員らは、これらの者を「右翼暴力団」と呼んでいた。)を導入していること、被告で書籍を購入することは、右会社臨時従業員らの資金源を提供することになるので、被告店舗での書籍の購入をやめて欲しいことなどを訴えるとともに、通行人らに右同趣旨を記載したビラを配布した。しかし、右原告組合員及びその支援労働者らは、前記(一)のとおりグランデ店に会社臨時従業員が配置されていることを知っていたので、更に進んで、同店舗内に立ち入って営業を妨害するとか、ピケッティングを張るなどして顧客が店内に入るのを妨害するとか、或いは、グランデ店で業務に従事している職制、従業員らをつかまえてこれを追及するなどの行為は行なわなかった。

(三)  ところで、会社臨時従業員らは、右(二)の原告組合の抗議、情宣行動をグランデ店に対する営業妨害と考え、後記2のとおりこれをグランデ店前から実力で排除するとともに、更には、後記2のとおりピケスト中のブックマート店に赴き、同店内に侵入し原告組合員らに暴行を働いたり、或いは、原告組合員及びその支援労働者らに対し各種の嫌がらせを行なった。

(四)  グランデ店での営業が一応軌道に乗ったと見た労務部部長橋本秀昭、社長室長秋山義憲らは、ブックマート店での営業を再開できるようにすることを次の課題とした。そこで、橋本、秋山ら会社臨時従業員らは、昭和五四年四月一三日、後記2(一七)(1)のとおり原告組合のブックマート店でのピケストを排除した。そして、被告は、右同日から、ブックマート店での営業を再開し、会社臨時従業員らは、原告組合員及びその支援労働者らがブックマート店の営業を妨害するのに対処するため、ブックマート店の警備にあたった。

(五)  右被告の処置及び会社臨時従業員らの行為に対し、原告組合員及びその支援労働者らは前記(二)同様の抗議、情宣活動を行なったが、前記会社臨時従業員らは、後記2のとおり、実力でこれを排除した。また、会社臨時従業員らは右ブックマート店のピケスト排除後も、後記2のとおり、原告組合の名誉を毀損したり、或いは、原告組合員に対し、各種の嫌がらせを行なった。

2  各論(本項においては、特にことわらない限り、日時はすべて昭和五四年である。)

(一)  二月二七日(請求原因3の(一)及び(二)(1)、(3)について)

(1) 前記四1(一)のとおり、訴外橋本秀昭、秋山義憲、斉藤滋寿ら会社臨時従業員約五〇名は、二月二七日午前一一時三〇分ころ、グランデ店に赴き、ピケストを行なっていた同店勤務の原告組合員らに対し、ブックマート店で勤務するように命じた。そして、右会社臨時従業員らは、右原告組合員らに対し、右配転命令に応じなければ、同人らの身体に危害を加えかねない態度を示した。そこで、右原告組合員らは、会社臨時従業員らとの衝突を一応回避するためブックマート店に移動した。

これに対し、会社臨時従業員らは、再び原告組合員らがグランデ店に来て、同店でピケストを行なうようなことがない様に警備にあたった。

このため、原告組合は、結局、グランデ店でのピケストを二月二七日で中止せざるを得ないことになった。

(2) ところで、原告組合書記長原告原らは、二月二七日午後二時三〇分ころ、被告に対し、前記(1)の配転命令及び会社臨時従業員の導入等についての説明を受けるため並びに団体交渉の開催を求めるため、本訴原告ら訴訟代理人芳永克彦弁護士を伴い、グランデ店を訪れた。そして、芳永弁護士が、被告の人事部長今泉孝造と会い、団体交渉の要求をするとともに、前記(1)の配転命令及び会社臨時従業員の導入等について説明を求めた。

これに対し、今泉は、芳永弁護士に対し、団体交渉には今すぐ応じられないが、三月中旬位であれば考えてもよい、また、会社臨時従業員は被告の営業再開をスムースにするために雇用したなどと回答した。

そして、芳永弁護士と今泉との会見が終わり、原告組合員らが帰ろうとしたとき、会社臨時従業員らは、グランデ店七階において、原告原を取り囲み、電気を消したうえで同原告の臀部を蹴る等の暴行を加えた。このため、原告原は、通院五日間を要する臀部打撲症の傷害を負い、二月二七日、神保町内科クリニックで治療を受け、治療費及び診断書作成料として一六〇〇円を支払った。

(二)  二月二八日(請求原因3の(二)(2)、(3)及び(三)について)

(1) 原告組合員及びその支援労働者らは、二月二八日午後零時三〇分ころから、前記四1(二)のとおり、グランデ店前で、抗議行動を行なっていた。そして、支援労働者である原告秋山も、右抗議行動に参加し、通行人にビラを配布するなどしていたが、同日午後一時ころ、グランデ店内一階に同店次長である佐藤克明がいるのに気づき、所持していた団体交渉要求書を同人に手渡すべく、同店内に入り、同人に近付いた。ところが、突然会社臨時従業員四、五名が、原告秋山の前に立ちふさがり、そのうちの一人が、同原告の後襟首をつかんでその場に引き倒した。原告秋山は、大声で「何をするのだ。」、「団交要求にきたのだ。」といいながら佐藤店次長の方に向おうとしたが、結局、右会社臨時従業員らに店外に排除された。このため、原告秋山は、佐藤に対し、団体交渉要求書を手渡すことはできなかったが、原告組合の方で団体交渉の開催を希望していることは知らせることができた。

(2) ところで、原告組合員らは、二月二八日午後六時三〇分ころ、前記(1)のグランデ店前での抗議、情宣行動をやめ、お茶の水駅方面へ帰ろうとした。すると、会社臨時従業員ら約二〇名は、グランデ店前からお茶の水駅までの間、右原告組合員らに対し、「左翼せん滅」等のシュプレヒコールを大声であげながら付きまとい、右組合員らを脅迫した。

(三)  三月一日(請求原因3(四)について)

訴外斉藤滋寿ら会社臨時従業員約二五名は、三月一日午後零時三〇分ころ及び同日午後五時三〇分ころの二度にわたり、ブックマート店に行き、同店舗入口付近でピケストを行なっていた原告組合員らに対し、詰め寄ったり、或いは、大声でわめきちらして威嚇する等の行為を繰り返した。

(四)  三月二日及び三月三日(請求原因3の(五)(1)、(3)及び(六)について)

(1) 原告大藪は、信山社に勤務するかたわら、前記原告組合の抗議、情宣行動に参加するなどして原告組合を支援していたところ、会社臨時従業員七名は、三月二日午後三時一五分ころ、原告大藪の職場である信山社店舗内で、口々に大声で「大藪を出せ、せん滅してやる」などと怒鳴りちらした。このとき、原告大藪は、たまたま右店舗内にいなかったが、同僚の草野尚子から右状況の報告を受け、畏怖した。

(2) 原告組合員らは、三月二日午後五時五〇分ころ及び翌三日、前記四1(二)のとおり、グランデ店前で抗議行動を行なっていた。

これに対し、訴外秋山義憲ら会社臨時従業員らは、右抗議行動を行なっていた原告組合員らに対し、ごみをぶちまけたり、或いはホースで水をかけるなどの嫌がらせを行ない、もって、原告組合の抗議行動(組合活動)を妨害した。

(五)  三月四日及び三月五日(請求原因3(二四)(2)について)

会社臨時従業員らは、三月四日午後八時ころ、原告組合員である原告野中保夫及び同野中知子夫妻の自宅玄関ドアに「死刑!!バカ 首を洗って待ってろ 野中センメツ!!」との落書きをし、同玄関ドアの鍵穴にボンドをつめ、更に、同ベランダの窓ガラスに鶏卵約八個を投げつけた。

また、会社臨時従業員らは、翌三月五日早朝にも、前記原告野中夫妻自宅付近の電柱に「極左暴力会社ゴロ!!野中夫婦は三ヶ月も会社でストを行い90名の社員を巻きぞえにしているのです。野中は会社もアパートも板橋からも出ていけ!!」と記載したビラを貼った。

会社臨時従業員らは、右各行為により、原告野中保夫及び同野中知子を脅迫するとともに、その名誉を毀損した。

(六)  三月六日(請求原因3(七)について)

(1) 原告組合員原告佐々木及び支援労働者原告山本ら五名は、三月六日午後零時ころから、前記四1(二)のとおり、グランデ店前で抗議行動を行なっていた。

これに対し、会社臨時従業員約一〇名は、右同日午後一時四〇分ころ、歩道幅一杯に広がり肩を組んで、右抗議行動中の原告組合員ら目掛けて突進した。そして、右会社臨時従業員らは、逃げ遅れた原告佐々木及び原告山本を取り囲み、めいめい足で右原告両名を蹴る等の暴行を働いた。

右会社臨時従業員らの暴行により、原告佐々木は、通院加療一週間を要する左大腿部及び右背部打撲症の傷害を負い、三月六日、神保町内科クリニックで治療を受け、治療費及び診断書作成料として一六〇〇円を支払い、原告山本は、通院加療一週間を要する右大腿部及び足関節打撲症兼下腿擦過創の傷害を負い、右同日、神保町内科クリニックで治療を受け、治療費及び診断書作成料として一万一六六〇円を支払い、また、原告組合も抗議行動(組合活動)を妨害された。

(2) また、支援労働者約一〇名が、三月六日午後一時五〇分ころ、前記グランデ店前での抗議行動に参加するため、グランデ店まで約三〇メートルの地点に差しかかったところ、突然、会社臨時従業員約一〇名が、隊列を組んで、右支援労働者の中に突入してきた。そして、この時、右会社臨時従業員らは、原告和田及び原告三田義樹に対し、足蹴にする等の暴行を加えた。

このため、原告和田は、通院加療一週間を要する両下腿打撲症及び右下腿擦過創の傷害を負い、三月六日、神保町内科クリニックで治療を受け、治療費及び診断書作成料として一六〇〇円を支払い、また、原告三田義樹は、通院加療一週間を要する左下腿打撲擦過創の傷害を負い、右同日、神保町内科クリニックで治療を受け、治療費及び診断書作成料として一六〇〇円支払うとともに、右負傷のため一週間仕事を休んだ。

(七)  三月七日(請求原因3(八)について)

支援労働者原告大藪は、三月七日午後一時五〇分ころ原告組合員らとともに、前記四1(二)のとおり、グランデ店前で抗議行動を行なっていた。

これに対し、訴外斉藤滋寿ら会社臨時従業員約二〇名は、原告大藪の背後から近付き、同原告を突き飛ばし、更に、同原告の左足アキレス腱付近を蹴る等の暴行を働いた。このため、原告大藪は、通院加療三日間を要する左下腿打撲擦過創の傷害を負い、三月七日、神保町内科クリニックで治療を受け、治療費及び診断書作成料として一六〇〇円を支払った。

(八)  三月八日(請求原因3の(九)、(一〇)について)

(1) 会社臨時従業員である訴外橋本秀昭は、三月八日午後三時三〇分ころ、ブックマート店を訪れ、ピケストを行なっていた原告組合員らに向って、「右翼暴力団と規定された以上は、そのとおりにやってやる。」などと申し向け、脅迫した。

(2) また、会社臨時従業員約二〇名は、三月八日午後六時三〇分ころ、抗議行動のためグランデ店に赴こうとしていた原告組合員らに対し、歩道一杯に阻止線を張ってグランデ店に近付けなくさせたうえ、訴外斉藤滋寿の笛を合図に、スクラムを組んで右原告組合員の中に突入した。そして、その際、会社臨時従業員らは、マイクを使用して情宣行動中の原告前田に対し、その顔面を殴打する等の暴行を加えた。

このため、原告前田は、全治一週間を要する口内裂傷の傷害を負わされたが、翌三月九日になっても傷口が痛むため、同日、神保町内科クリニックで治療を受け、治療費及び診断書作成料として一六〇〇円を支払い、また、原告組合も抗議行動(組合活動)を妨害された。

(九)  三月一〇日(請求原因3(二)について)

原告組合員及びその支援労働者らは、三月一〇日午後六時二〇分ころ、グランデ店前で抗議行動を行なうために、グランデ店の西隣にある小宮山書店前からグランデ店前に近付こうとした。これに対し、会社臨時従業員らは、訴外斉藤滋寿の笛を合図に、一斉にスクラムを組んで右原告組合員及び支援労働者らの中に突入した。そして、右会社臨時従業員らは、原告流川に対しその陰部を蹴り上げる等の、原告山本に対しその左肩甲骨下に回し蹴りを加え、左胸心臓部付近を手拳で殴打する等の、原告林に対しその左胸部に回し蹴りを加える等の各暴行を働いた。

このため、原告流川は、全治一週間を要する左手背打撲及び陰部打撲の傷害を負い、直ちに救急車で東京警察病院に運ばれ、同病院の治療を受け、その治療費として四四五〇円を支払い、原告山本は、全治四週間を要する左第三、第五肋骨骨折の重傷を負い、受傷後一週間を経過しても胸の痛みは増すばかりであったので、三月二〇日に日本医科大学第一病院で治療を受け、治療費及び診断書作成料として四四〇〇円を支払い、原告林は、加療一週間を要する胸部打撲及び左下肢打撲の傷害を負い、原告流川と同様直ちに救急車で東京警察病院に運ばれ、同病院の治療を受けた後、更に日本医科大学第一病院で検査及び治療を受け、同病院に治療費及び診断書作成料として合計一万一三六〇円を支払い、また、原告組合も抗議行動(組合活動)を妨害された。

(一〇)  三月一一日(請求原因3(三)について)

訴外斉藤滋寿、田中謹司ら会社臨時従業員約一八名は、三月一一日午前一一時ころ、ブックマート店に赴き、隊列を組んで原告組合員らのピケッティングを突破して店舗内に乱入し、約一〇分間にわたって、原告組合員らを追いかけまわすなどの脅迫行為を繰り返し、もって、原告組合のブックマート店でのピケストを妨害した。

(一一)  三月一五日(請求原因3(一三)について)

原告組合員及びその支援労働者らは、三月一五日午後六時ころ、グランデ店前で抗議行動を行なうため、ブックマート店を出発した。そして、右原告組合員らがグランデ店まで約二〇メートルの距離のところに到達したところ、会社臨時従業員らは、歩道幅一杯に広がって原告組合員らがグランデ店に近付くのを阻止した。そこで、右原告組合員らは、会社臨時従業員らに対し、抗議のシュプレヒコールをあげた。これに対し、会社臨時従業員らは、同日午後六時一〇分ころ、訴外斉藤滋寿の笛を合図に、スクラムを組んで原告組合員らに向って突進し、原告笠原に対しその背中に肘打ち等の、原告佐々木に対し、その髪を引っ張る等の各暴行を働いた。

そこで、右原告組合員らは、ブックマート店方向に約一〇メートル後退して、グランデ店前で通行人に対しビラを配布する等の抗議行動をしていた原告組合の女子組合員らが右抗議行動を終えて帰るのを待っていた。そして、同日午後六時三〇分ころになって、右女子組合員らが、グランデ店前での抗議行動を終えて、前記原告組合員及び支援労働者らに合流したので、右の者らは、ブックマート店方向へ帰ろうとした。丁度その時、訴外斉藤滋寿ら会社臨時従業員らが、再び、スクラムを組んで右原告組合員らに向かって突進し、これらの者を取り囲んだ。そして、右会社臨時従業員らは、原告野中保夫に対し、その右下脚部及び大腿部を足蹴にする等の、原告笠原に対しその顔面、左頸部及び上腕部を殴打する等の、原告笹倉に対しその左足関節部を足蹴にする等の、原告佐々木に対しその臀部及び右大腿部を足蹴にする等の各暴行を働いた。

右会社臨時従業員の暴行により、原告笠原は、加療二週間を要する頸部、右上腕及び両大腿打撲の傷害を負い、翌三月一六日になっても痛みがとれなかったため、同日、神保町内科クリニックで治療を受け、診断書作成料として一〇〇〇円を支払い、原告中野保夫は、全治一週間を要する胸部打撲の傷害を負い、翌三月一六日、神保町内科クリニックで治療を受け、診断書作成料として一〇〇〇円を支払い、原告笹倉は、全治約二週間を要する左足関節部打撲傷の傷害を負い、三月一五日、鈴木又七郎医師の治療を受け、診断書作成料として二五〇〇円を支払い、原告佐々木は、全治一週間を要する臀部打撲傷の傷害を負い、三月一五日、原告笹倉同様前記鈴木医師の治療を受け、診断書作成料として二五〇〇円を支払い、また、原告組合も抗議行動(組合活動)を妨害された。

(一二)  四月七日(請求原因3(一四)について)

原告組合員らは、四月七日午後一時ころから二時五〇分ころまでの間、前記四1(二)のとおり、グランデ店前で抗議行動を行なっていた。

これに対し、訴外斉藤滋寿、田中謹司、高橋一己、高橋渉ら会社臨時従業員約一六名は、右抗議行動を行なっていた原告組合員らに対し、突き飛ばして転倒させる、取り囲んで足蹴にする、立ちはだかってすごむ等の暴行、脅迫を繰り返し、もって、原告組合の右抗議行動(組合活動)を妨害した。

(一三)  四月八日(請求原因3の(一五)、(一六)について)

(1) 原告組合員及び支援労働者原告秋山、同木村ら五名は、四月八日午後一時ころから、前記四1(二)のとおり、グランデ店前で抗議行動を行なっていた。

これに対して、会社臨時従業員は、同日午後一時五分ころ、右抗議行動を行なっていた支援労働者原告秋山に対し、その股間を右足で思い切り蹴り上げる等の、また、同日午後二時二〇分ころ、右抗議行動を行なっていた支援労働者原告木村に対し、その胸部を足蹴にする等の各暴行を働いたほか、右抗議行動を行なっていた原告組合員らのマイクを強引に奪い取り、そのコードを切断するなどの妨害行為を繰り返した。

右会社臨時従業員の暴行等により、原告秋山は、全治一週間を要する陰茎打撲、包皮切創(五針縫合)の傷害を負い、三月八日、駿河台日本大学病院で治療を受け、治療費及び診断書作成料として合計一万二八二〇円を支払い、原告木村は、二週間の安静加療を要する左前胸部打撲の傷害を負い、同日、駿河台日本大学病院で治療を受け、治療費及び診断書作成料として合計三六〇〇円を支払い、また、原告組合も抗議行動(組合活動)を妨害された。

(2) 訴外斉藤滋寿、高橋一己、松島成佳ら会社臨時従業員約一六名は、四月八日午後三時五五分ころ、ブックマート店に赴き、同店舗の入口二か所から隊列を組み、原告組合員らのピケッティングを突破し店内に乱入した。そして、右会社臨時従業員らは、同店舗内にいた原告組合員及び支援労働者のうち本件ピケストにつき中心的役割を果している者に対し攻撃してきた。すなわち、右会社臨時従業員は、原告野中保夫に対しその腹部を蹴り上げ、鼻を手拳で突く等の、原告原に対しその胸部を殴る蹴る等の、原告中村に対しその頭部を足蹴にする等の、原告三田敬に対しその陰部を蹴り上げる等の各暴行を加えたほか、原告組合所有のハンドマイク三台のコードをペンチで切断した。

右会社臨時従業員らの暴行等により、原告野中保夫は、安静加療一〇日間を要する鼻骨骨折の傷害を負い、四月八日、日本医科大学附属病院で治療を受け、治療費及び診断書作成料として合計四万三一二〇円を支払い、原告原は、通院加療一週間を要する左胸部打撲症及び左肩打撲症の傷害を負い、同日、日本医科大学附属病院で治療を受け、治療費及び診断書作成料として合計一万五一八〇円を支払い、原告中村は、全治三週間を要する頭部外傷の傷害を負い、同日、日本医科大学附属病院で治療を受け、治療費及び診断書作成料として合計四万七八四〇円を支払い、原告三田敬は、左丸内出血、陰嚢内出血及び亀頭部皮下出血の傷害を負い、四月八日、日本医科大学附属病院で治療を受け、治療費及び診断書作成料として合計八九二〇円を支払ったが、右負傷のため約五日間は外出することさえできない状態であったし、また、原告組合も、ピケストを妨害されるとともに、前記ハンドマイク三台を修理するため一万六二〇〇円を支払った。

(一四)  四月九日及び四月一〇日(請求原因3(一七)、(一八)について)

(1) 訴外秋山義憲、田中謹司、斉藤滋寿ら会社臨時従業員約一五名は、四月九日及び一〇日の二度にわたり、原告組合がピケストを行なっているブックマート店に赴き、梯子を使用し、同店舗二階外壁面に「今、僕たちは働かないで権利だけを主張する乳離れしていない精神的未熟児ゴキブリ集団です」、「真の労働者とは、貯金に仕事に親孝行 これが男の生きる道、昔は親のスネカジリ、今は会社のスネカジリ」と大書きしたステッカーを貼り、もって、原告組合の名誉を毀損した。

(2) 訴外斉藤滋寿ら会社臨時従業員約一五名は、四月一〇日午後六時すぎころ、原告組合員らがピケストを行なっていたブックマート店内に乱入した。これに対し、原告組合員らは難を避けるため店舗外に退避したが、右会社臨時従業員らは、退避した原告組合員らに執拗に付きまとい、更に、原告組合所有のハンドマイクをペンチで切断する等の嫌がらせを行なった。

このため、原告組合は、ピケストを妨害されたほか、財産権及び組合活動をそれぞれ侵害された。

(一五)  四月一一日(請求原因3(一九)について)

会社臨時従業員約一五名は、四月一一日午後三時ころ、同五時三〇分ころ及び同六時ころの三回にわたり、ブックマート店に赴き、原告組合員らのピケッティングを突破して店舗内に乱入し、ピケッティング等を行なっていた原告組合員らを取り囲んで脅迫し、殊に第三回目の乱入の際は、原告原に対し暴力を加え、同原告が所有していたカメラ一台(購入価格九万六〇〇〇円、約四年間使用)を無理矢理奪取し、これを路上に叩きつけた。

このため、原告原は、暴行を受けるとともに、前記カメラを修理不可能な状態に損壊され、また、原告組合はピケストを妨害された。

(一六)  四月一二日(請求原因3の(五)(2)及び(二〇)について)

(1) 訴外斉藤滋寿、秋山義憲ら会社臨時従業員約一六名は、四月一二日午後二時三〇分ころ、原告組合員らがピケストを行なっていたブックマート店に乱入した。これに対し、右店舗内にいた原告組合員らは、難を避けるため店舗外に逃げたが、たまたま便所に入っていた原告笹倉が逃げ遅れた。訴外斉藤滋寿、秋山義憲ら会社臨時従業員約五名は、右逃げ遅れた原告笹倉を見つけるや、同原告に襲いかかり、同原告が所有していたカメラ一台(購入価格一一万〇二〇〇円、使用期間不明)を、同原告の左腕をねじり上げ、足を蹴り、頭部を手拳で殴打する等の暴行を加えたうえで奪取し、これを床に叩きつけた。

このため、原告笹倉は、通院加療一〇日間を要する頭部及び右大腿部打撲症、左前腕打撲擦過傷、左手打撲症の傷害を負い、四月一二日、神保町内科クリニックで治療を受け、治療費及び診断書作成料として合計一七〇〇円を支払うとともに、前記カメラ一台を修理不能な状態に損壊され、また、原告組合もピケストを妨害された。

(2) 会社臨時従業員らは、四月一二日から五月下旬の間ほぼ連日にわたり、原告組合の行動を支援している原告大藪の職場である信山社に赴き、「大藪を出せ。」、「大藪、外へ出ろ。」、「やったろうじゃないか。」等と大声で怒鳴り散らして原告大藪を脅迫したり、或いは、同社のショーウインドーに「大藪さん好きよ。」、「俺は神田の大藪だ。」、「俺はゴキブリが好きだけどゴキブリじゃない。」等のステッカーを貼って、原告大藪の名誉を毀損する行為を繰り返した。

(一七)  四月一三日(請求原因3の(二一)、(二二)について)

(1) 原告組合が四月一二日までブックマート店でピケストを行なっていたため、被告は、同日まで、右店舗での営業を行なうことができなかった。そこで、被告は、四月一三日から、右店舗での営業を再開することとし、同日以降、右店舗に、会社臨時従業員約三〇名を配置し、もし、原告組合員らが同店舗でピケストを行なおうとすれば、直ちにこれを実力で排除する体制をとった。

このため、原告組合は、前記のとおりこれまで右会社臨時従業員から幾多の暴行を受けており、もしブックマート店でピケストを継続しようとすれば多数の負傷者が出ることが必定であったので、結局、ブックマート店でのピケストを四月一二日で中止せざるを得ないことになった。

(2) ところで、原告組合は、前記のとおり団体交渉を拒否し、会社臨時従業員を導入してグランデ店及びブックマート店のピケストを排除した被告の態度並びに会社臨時従業員らの原告組合員及び支援労働者に対する暴行等に抗議するため、四月一三日昼、グランデ店前で抗議集会及び抗議行動を行なうことを予定した。

そこで、原告組合員らが、右抗議集会に参加するため、四月一三日午後零時一二分ころ、ブックマート店方向からグランデ店に向かって移動していたところ、会社臨時従業員らは、両店舗間の途中にある三省堂書店前付近の歩道上に長椅子を並べて、原告組合員らが、グランデ店に近付き、右集会に参加するのを阻止した。更に、会社臨時従業員らは、同日午後二時三〇分ころ、右会社臨時従業員らの行為を写真撮影していた原告山本に対し、その顔面に頭突きを加える等の暴行を働いた。

また、訴外秋山義憲ら会社臨時従業員らは、四月一三日午後一時四〇分ころ、ブックマート店のすずらん通り側入口付近でマイクを使用して情宣、抗議行動をしていた原告組合員らに暴行を働いたが、その際、これを止めに入った支援労働者の原告大久保に対し、その顔面を足で蹴る等の暴行を働いた。

右会社臨時従業員らの行為により、原告山本は、安静加療一週間を要する鼻骨骨折(整復術施行)の傷害を負い、四月一三日、駿河台日本大学病院で治療を受け、治療費及び診断書作成料として合計二万四四二〇円を支払い、原告大久保も、安静加療一週間を要する鼻骨骨折(整復術施行)の傷害を負い、右同日、駿河台日本大学病院で治療を受け、治療費及び診断書作成料として合計三六〇〇円を支払い、また、原告組合は、組合活動を妨害された。

(一八)  四月一四日から四月末日ころまでの間(請求原因3(二三)について)

会社臨時従業員らは、四月一四日から四月末日ころにかけて、ブックマート店の一階ショーウインドーに、畳一畳分位の模造紙に、「皆様長らく御迷惑をお掛け致しておりました。害虫駆除も終えて平常に営業を再開しております。尚ゴキブリストライキ集団の諸君もブックマートに復帰して安心してストを続けて下さい。でもお客様に迷惑をお掛けしてはいけませんよ。」と大書きした貼り紙を掲示し、もって、原告組合の名誉を著しく毀損した。

(一九)  四月末日ころ以降(請求原因3(二四)について)

(1) 被告は、四月末日ころ、すべての原告組合員の身元保証人宛に、原告組合のストライキ(いわゆるピケスト)は違法争議であり、被告は右違法争議によって被った損害を原告組合員とその身元保証人に対して請求する訴えを提起することになった旨、そして、その詳細は、被告の担当者が直接説明する旨を記載した通知書を送付した。

(2) そして、前記三2(二)のとおり原告組合に対する労務対策の一切を任されていた会社臨時従業員らが、右被告の担当者として、五月上旬ころ、すべての原告組合員の両親又は身元保証人に対し、電話で、「会社(被告)は、組合(原告組合)のストライキによって膨大な損害を被ったので、今度、その損害を請求することになった。お宅の息子さんも組合員であるので身元保証人と親許に損害の請求がいく。息子さんが組合をやめれば、その損害の責任は追及しない。」とか、「お宅の弟さんたち(原告組合員ら)のストライキによって、(被告会社は)、損害を被ったので、それに対する損害賠償請求を行ないたい。あなたの弟さん(原告組合員)は成田の過激派と付き合っている。」とか、「会社(被告)を辞めるならば、こんな大げさなことはしない。」とか、「組合(原告組合)の人数がどんどん減っている。」とか、「支援労働者は成田の過激派である。」とか、或いは、「弁護士は左翼の弁護士で金のために、資金を得るために弁護しているんだ。」等と、原告組合員の組合からの脱退又は被告からの退社を迫る内容の話をした。

(3) 会社臨時従業員らは、右(1)及び(2)の通知書及び電話にもかかわらず、原告組合員らが組合から脱退も被告から退社もしないとみるや、五月中旬ころから八月ころにかけて、次のないし記載のとおり、原告組合員の自宅や実家付近に、組合員の顔写真に「極左暴力集団」、「過激派の情婦」等と書き込んだビラを貼り付ける等の悪質な嫌がらせを繰り返し、原告組合員を原告組合から脱退させ、又は被告から退職させようとした。

五月九日ころ(請求原因3(二四)(2)について)

会社臨時従業員は、五月九日ころ、原告前田が当時居住していた品川区《番地省略》○○荘周辺の電柱、掲示板など約一〇か所に、同原告の顔写真を配し「左翼暴力団」と記載したステッカーを多数貼付した。

また、会社臨時従業員らは、五月九日ころ、原告組合員である小幡一彰の自宅周辺にも、原告前田と同様のステッカー多数を貼付した。

五月二〇日ころから五月末日ころまでの間(請求原因3(二四)(2)のないしについて)

会社臨時従業員らは、五月二〇日ころから五月末日ころまでの間、次の①ないし⑤のとおり、原告組合員のうち女子パートタイマーの原告野中知子、訴外立川和代、訴外石川淑子、訴外渡部智子、訴外相馬ふみ子、訴外長尾明子に対し、悪質な嫌がらせを繰り返した。

① 会社臨時従業員らは、五月二〇日ころ、原告野中知子の自宅付近の電柱、掲示板、建物の壁及び塀などに「神田の尻軽女 娼婦野中知子 センメツするぞ」と記載したステッカー約八〇枚を貼付した。

② 会社臨時従業員らは、五月二〇日ころ、千葉県流山市松ヶ丘の原告組合員訴外立川和代の実家周辺の電柱、看板などに、同人の顔写真を配し、「立川和代 神田のゴキブリ 尻軽女」又は「左翼過激派の情婦立川和代を放逐するぞ!!5・20 葬送協会 立川和代班」と記載したステッカー多数を貼付した。

③ 会社臨時従業員らは、五月中旬から下旬ころにかけて、静岡県三島市幸原町の原告組合員訴外石川淑子の実家周辺の電柱、建物の壁及び塀など約二〇か所に、同人の顔写真を配し「神田のゴキブリ尻軽女 石川淑子」と記載したステッカー約三〇〇枚を貼付するとともに、更に、右実家周辺の道路及び建物の塀など約一〇か所に、青色のスプレーペンキで「左翼暴力団追放 石川淑子」と落書きをした。

④ 会社臨時従業員らは、五月二一日ころ、江戸川区平井の原告組合員訴外渡部智子の実家周辺のシャッター、電柱、自動販売機、看板などに、同人の顔写真を配し「神田の尻軽女 渡部智子」と記載したステッカー約一〇〇枚を貼付した。

また、会社臨時従業員らは、五月二三日午後一時四〇分ころから約八分間及び五月二八日午後一時四八分ころから約三分間、前記渡部智子の実家周辺を、街頭宣伝車(車体の右前部ドアーに日の丸を配し、その下に新生亜細亜青年集団と記載し、また、車体後部に天地社と記した装甲車両)で徘徊しながら、マイクで、「渡部智子は出て来い。」、「和泉屋の娘、渡部智子は極左暴力集団に属している。このような者を平井の町から追放しよう。」などと怒号した。

更に、会社臨時従業員四名は、五月二九日午後一時一〇分ころ、前記渡部智子の実家にジープを乗りつけ、右ジープを約三〇分間にわたり右渡部の実家前に駐車させ、右渡部の父公雄の「この狭い道路で何故駐車するのか。あんたたちは神田から来たのだな。」の抗議に対し、「ここは天下の公道だ。車を止めてどこが悪い。娘が何をやっているのか知っているのか。あいつらは極左暴力団に属しているんだ。働かないで金を欲しいと言っているんだ。」などと申し向ける等の嫌がらせを行なった。

そして、会社臨時従業員は、また、五月二九日午後二時二〇分ころから約三〇分間にわたり、前記渡部の父公雄に対し、電話で、「お宅の娘は、極左暴力集団に属して、暴力行為を一五〇日間もやっている。娘も娘なら親も親だな。娘をよく監視しておけ。プロとしてやるのなら話は別だ。」などと申し向ける等の嫌がらせを行なった。

⑤ 更に、会社臨時従業員らは、五月二〇日ころ、原告組合に属する女子パートタイマーの訴外相馬ふみ子、同長尾明子に対しても、その自宅周辺の電柱等に、右原告野中知子、訴外立川、同石川と同様のステッカーを貼付する等の悪質な嫌がらせを行なった。

七月一八日から七月二四日ころの間(請求原因3(二四)(2)の、、、について)

① 会社臨時従業員らは、七月二二日から二三日ころの間、原告前田の居住していた前記○○荘周辺の商店街沿いの電柱、看板、掲示板等に、同原告の顔写真を配し「自称革労協活動家撃滅 前田隆承」と記載したステッカーを多数貼付した。

② 会社臨時従業員らは、七月一九日早朝、原告野中保夫の自宅付近の掲示板、自動販売機などに、同原告の顔写真を配し「左翼過激派追放 野中保夫」と記載したステッカーを多数貼付したうえ、同原告の自宅付近に金魚、鮒の死骸合計二〇匹余をビニール袋に入れて放置する等の悪質な嫌がらせを行なった。

そして、原告野中保夫が、母親及び原告組合員らの協力でようやく右ステッカーを取り剥がしたところ、会社臨時従業員らは、七月二〇日早朝、二一日早朝及び二四日早朝にも、同原告の自宅付近の電柱等に、同原告の顔写真を配し「自称革労協活動家撃滅 清水町アジトの責任者野中保夫」と記載したステッカー多数を貼りめぐらしたほか、同原告の自宅付近の歩道橋及び高速道路の各橋脚部等多数の場所に、赤色のスプレーペンキで「革労協 野中保夫センメツ」、「野中保夫処刑」等と落書きをした。

③ 会社臨時従業員らは、七月一八日深夜から翌一九日早朝にかけて、二〇日深夜から二一日早朝にかけて及び二二日深夜から二三日早朝にかけて、連続して、足立区保木間の原告組合員訴外堀江達也の実家周辺の電柱、看板など多数の場所に、同人の顔写真を配し「左翼過激派追放 堀江達也」と記載したステッカーを多数貼りめぐらしたほか、同人の自宅付近の陸橋階段、同橋脚部、電柱及び建築現場の塀など多数の場所に、赤色スプレーペンキで「革労協堀江達也死刑」などの落書きをするなどの悪質かつ執拗な嫌がらせを行なった。

④ 会社臨時従業員らは、七月二二日深夜から二三日早朝にかけて、横浜市戸塚区平戸町の原告組合員訴外長尾明子の実家周辺の電柱、看板、ガードレールなどに、同人の顔写真を配し「革労協活動家長尾明子死刑」などと記載したステッカー多数を貼りめぐらしたほか、同人の実家付近のブロック塀、ガードレール、掲示板などに、スプレーペンキで「極左革労協 長尾明子センメツ」、「革労協 長尾明子処刑」などと落書きをする等の悪質の嫌がらせを行なった。

八月九日から八月一二日の間(請求原因3(二四)(2)の、、について)

① 会社臨時従業員らは、八月一一日早朝、富山県黒部市生地にある原告前田の実家付近の県道沿いの電柱、看板などに、同原告の顔写真を配し「自称革労協活動家撃滅 前田隆承」と記載したステッカーを多数貼付した。

② 会社臨時従業員らは、八月九日午前一時ころから午前三時ころの間、長野県上水内郡信濃町大字大井にある原告組合書記長の原告原の実家周辺の電柱などに、同原告の顔写真を配し「信濃町の恥曝し 革命的労働者協会 原雄次」と記載したステッカーを多数貼付した。

③ 会社臨時従業員らは、八月一一日深夜から翌一二日早朝にかけて、新潟県十日町市住吉町にある原告組合執行委員長の訴外関口武男の実家周辺付近の県道沿いの電柱などに、同人の顔写真を配し、「革命的労働者協会 十日町支部 高田町住吉 抗議先関口商会」とか、或いは、「十日町の恥曝し、高田町住吉 抗議先関口商会」とか記載したステッカーを多数貼付した。

(4) 原告前田、同野中保夫、同野中知子、同原は、右(3)の会社臨時従業員らの行為により、脅迫されるとともにその名誉を著しく毀損され、また、原告組合は、前記(1)ないし(3)の被告ないしは会社臨時従業員らの行為により、次のとおり組合の維持、存立(団結権)上、多大の損害を被った。

すなわち、前記(1)ないし(3)の会社臨時従業員らの悪質な嫌がらせ等に抗しきれず、昭和五四年五月二四日には原告組合員訴外相馬ふみ子が、同年七月二三日には同山脇道子が、同年七月二五日には同堀江達也が、同五五年二月二八日には同小幡一彰が、同五六年五月一日には原告前田が、被告を退職した(なお、右退職者らには、退職を境に嫌がらせは止まった。)。そして、被告を退職するに至らない場合でも、全組合員が、家族、身元保証人、近隣住民との人間関係の悪化を強いられ、原告組合に留まるか否かの岐路に立たされる等、原告組合の団結に多大の障害が生じた。

五  不法行為の成否について

そこで、前記二ないし四の認定事実を前提として、原告らの主張する被告ないし会社臨時従業員らの行為が不法行為に該当するか否かについて検討する。

1  不法行為の成立が否定されるもの

まず、原告組合は、被告又は被告の雇用した会社臨時従業員らの、請求原因3(二)記載の行為により団体交渉権を、同3の(一)、(四)、(一二)、(一六)、(一八)ないし(二一)各記載の行為により争議権を、同3(二四)(1)の行為により名誉を、同3(一九)記載の行為により所有権をそれぞれ不法に侵害され、損害を被った旨主張するので、この点につき判断する。

(一)  団体交渉権

原告組合が、会社臨時従業員らに団体交渉権を侵害されたと主張している際の具体的状況は、前記四2の(一)(2)及び同(二)(1)各記載のとおりである。以上の認定事実によれば、昭和五四年二月二七日の場合は、芳永弁護士を通じて被告へ団体交渉の申込みがされており、かつ、原告原への暴行は右申込み後のことであるから、原告組合の団体交渉権そのものの侵害があったとはいえないし、また、同年二月二八日の場合には、確かに、会社臨時従業員の行為により原告組合の団体交渉の申入れが妨害されたことが認められるが、右申入れの意思は被告グランデ店次長である訴外佐藤克明に伝わっており、この点において、損害が発生したとみることができない。

よって、原告組合の団体交渉権が侵害され、損害が発生したことを理由とする不法行為の主張は、採用することができない。

(二)  争議権

原告組合が、会社臨時従業員らに争議権(ピケスト)を侵害されたと主張している際の具体的状況は、前記四2の(一)(1)、(三)、(一〇)、(一三)(2)、(一四)(2)、(一五)、(一六)(1)、(一七)(1)各記載のとおりである。以上の認定事実によれば、会社臨時従業員らが、原告組合のグランデ店及びブックマート店でのピケストを妨害したことは、明らかである。

しかし、原告組合のグランデ店及びブックマート店でのいわゆるピケストの状況は、前記三1(二)記載のとおりである。そして、右認定事実によれば、被告全従業員の約三割にも満たない従業員しか加入していない原告組合が、昭和五三年四月六日から同年一一月二一日までの間は営業全日数のうち約三分の二にあたる日数、断続的に時限又は全日のストライキを繰り返し、また、同年一一月二二日以降は無期限の全日ストライキを行なったのであり、そのストライキの際行なったピケッティングは、もっぱら店内に入ろうとする顧客を対象とし、原告組合員らの説得を無視して敢えて店内に入ろうとする顧客に対しては実力をもってでも入店を阻止するというものであり、平和的説得の限界を逸脱するものであり、その結果、店内書籍販売を主たる業務とする被告の営業を不能に陥らせ、《証拠省略》によれば、被告に一億円以上の損失を与えたことが認められ、これら諸般の事情を併せ考えると、原告組合がグランデ店及びブックマート店で行なったピケストは、違法といわざるを得ない。

そうすると、原告組合のグランデ店及びブックマート店でのピケストは法的保護の対象とはなりえず、これが妨害されたからといって、争議権が侵害されたものということはできない。

よって、原告組合の争議権が侵害されたことを理由とする不法行為は認めることができない。

(三)  名誉

原告組合は、昭和五四年四月末日ころ、被告に、その名誉を侵害された旨主張するが、原告組合が主張するように、被告又は会社臨時従業員らが「組合は、社長の自宅周辺に『社長を殺す』とか『爆弾を仕掛けた』などのステッカーを貼っている。」等原告組合の名誉を侵害する旨の電話をしたと認めるに足りる証拠はない。

(四)  所有権

原告組合は、昭和五四年四月一一日に、その所有するハンドマイクのコードを会社臨時従業員に切断された旨主張するが、本件全証拠を検討するも、右事実を証するに足りる証拠はない。

2  不法行為の成立が肯定されるもの

(一)  原告組合に対する不法行為

原告組合は、被告又は被告の雇用した会社臨時従業員らの請求原因3の(三)、(六)ないし(一一)、(一三)ないし(一五)、(一八)、(二二)各記載の行為により組合活動を、同3(二四)記載の行為により団結権を、同3の(一七)、(二三)各記載の行為により名誉を、同3の(一六)、(一八)各記載の行為により所有権をそれぞれ不法に侵害された旨主張するので、この点につき判断する。

(1) 組合活動

原告組合が、会社臨時従業員らに組合活動を侵害されたと主張している際の具体的状況は、前記四2の(二)(2)、(四)(2)、(六)ないし(九)、(一一)、(一二)、(一三)(1)、(一四)(2)、(一七)(2)各記載のとおりである。以上の認定事実によれば、右会社臨時従業員らの各行為により、原告組合員らが畏怖し、その後被告に対し抗議行動を行なうにあたっても、会社臨時従業員らの同種の行為が当然に予想されたため、組合活動に消極的になりがちな組合員もないではなく、原告組合の組合活動が停滞を余儀なくされ、組合活動に支障を生じたであろうことを推認するにかたくない。そして、原告組合のグランデ店前の抗議行動の具体的態様は、前記四1(二)記載のとおりであり、前記ピケストと異なり、適法である。

よって、右会社臨時従業員らの原告組合の組合活動の侵害行為は、不法行為にあたる。

(2) 団結権

原告組合が、被告又は会社臨時従業員らに団結権を侵害されたと主張している際の具体的状況は、前記四2(一九)記載のとおりである。以上の認定事実によれば、原告組合のグランデ店及びブックマート店でのピケストが違法であることは前記のとおりであり、被告において原告組合員の身元保証人宛に原告組合のストライキにより被った損害を請求する訴えを提起する旨の通知書を送付したからといって、直ちに、被告の右行為が不法行為に該当するとはいえない。しかし、それに引き続いて会社臨時従業員の行なった行為は、その態様等に照らし、原告組合の団結権を侵害するものであり、不法行為に該当することは、明らかである。

(3) 名誉及び所有権

原告組合が、会社臨時従業員らに名誉を侵害されたと主張している際の具体的状況は、前記四2の(一四)(1)、(一八)各記載のとおりであり、また、所有権を侵害されたと主張している際のそれは、前記四2の(一三)(2)、(一四)(2)各記載のとおりである。以上の認定事実によれば、会社臨時従業員らが原告組合の名誉及び所有権を侵害していることは、明らかである。

よって、右会社臨時従業員らの原告組合の名誉及び所有権侵害行為は、不法行為にあたる。

(二)  原告組合を除く原告ら個人に対する不法行為

既に認定したとおり、会社臨時従業員らの行為により、原告原は前記四2の(一)(2)、(一三)(2)、(一五)、(一九)(3)②各記載のとおり、原告野中保夫は前記四2の(五)、(一一)、(一三)(2)、(一九)(3)②各記載のとおり、原告野中知子は前記四2の(五)、(一九)(3)①各記載のとおり、原告佐々木は前記四2の(六)(1)、(一一)各記載のとおり、原告前田は前記四2の(八)(2)、(一九)(3)の及び①各記載のとおり、原告流川は前記四2の(九)記載のとおり、原告笠原は前記四2の(二)記載のとおり、原告笹倉は前記四2の(一一)、(一六)(1)各記載のとおり、原告大藪は前記四2の(四)(1)、(七)、(一六)(2)各記載のとおり、原告山本は前記四2の(六)(1)、(九)、(一七)(2)各記載のとおり、原告和田は前記四2の(六)(2)記載のとおり、原告三田義樹は前記四2の(六)(2)記載のとおり、原告林は前記四2の(九)記載のとおり、原告秋山は前記四2の(一三)(1)記載のとおり、原告木村は前記四2の(一三)(1)記載のとおり、原告中村は前記四2の(一三)(2)記載のとおり、原告三田敬は前記四2の(一三)(2)記載のとおり、原告大久保は前記四2の(一七)(2)記載のとおり、それぞれ不法に身体、名誉又は財産権を侵害された。

よって、会社臨時従業員らの右原告組合を除く原告ら個人に対する身体、名誉又は財産権に対する侵害行為は、すべて不法行為にあたる。

六  被告の責任について

前記五での検討から、同五2掲記の会社臨時従業員らの原告らに対する組合活動、団結権、身体、名誉及び所有権侵害行為が不法行為にあたることが明らかとなった。そこで、被告が右会社臨時従業員らの不法行為につき責任を負うべきか否かにつき判断する。

被告は、原告組合に対する労務対策及びグランデ、ブックマート両店舗での営業を支障なく行なうために訴外橋本秀昭ら約五〇名を会社臨時従業員として雇用したこと、そして、被告は、右雇用の際、右会社臨時従業員らの指導者的地位にいる訴外橋本が昭和五一年ころ労働争議にからんで労働組合員に暴行を働き罰金五万円の刑に処せられた前歴を知りながら、訴外橋本ら会社臨時従業員に原告組合に対する労務対策及び右両店舗の警備の一切を任せたこと並びに会社臨時従業員らの不法行為は原告に対する労務対策の一環として及びグランデ、ブックマート両店舗での営業を支障なく行なうためにされたものであることは、前記三2及び四1記載の認定事実のとおりである。

そうだとすると、被告が、民法七一五条により、会社臨時従業員らの不法行為により原告らが被った損害を使用者として賠償すべき義務があることは、明らかである。

七  正当防衛(抗弁)の当否について

ところで、被告は、会社臨時従業員らの行為は、原告らの違法行為に対し必要やむを得ず採られたもので正当防衛にあたる旨主張するので、以下右抗弁の当否を判断する。

会社臨時従業員らの行為のうち不法行為にあたるものは、前記五2で認定したとおりであり、これを大別すれば、原告らのグランデ店前での抗議行動に関連して会社臨時従業員らが行なった行為、原告組合がピケストを行なっていたブックマート店に会社臨時従業員らが押しかけて行って行なった行為、原告組合員らの自宅、実家付近及び支援労働者の職場へ会社臨時従業員らが赴いて行なった行為、その他の行為の四種類に類別できる。そこで、以下、右各類型別に正当防衛の成否を検討することにする。

1  原告らのグランデ店前での抗議行動に関連して会社臨時従業員らが行なった行為

原告らのグランデ店前での抗議行動に関連して行なわれた会社臨時従業員らの行為を更に細かく分類すると、原告らがグランデ店前で抗議行動中に会社臨時従業員らが行なった行為、原告らがグランデ店前での抗議行動に向かう途中に会社臨時従業員らが行なった行為、原告らがグランデ店前での抗議行動を終えて帰る途中に会社臨時従業員らが行なった行為に三分することができる。

(一)  原告らがグランデ店前で抗議行動中に会社臨時従業員らが行なった行為

原告らのグランデ店前での抗議行動の内容は、前記四1(二)記載のとおりである。すなわち、その態様は、グランデ店前で、大体一日一時間程度、店内の顧客及び通行人らに、マイク及びビラで、被告店舗での書籍の不買等を訴えたのであり、顧客が店舗内へ入るのを実力で妨害する行為等は一切行なっていない。かような抗議行動の態様に鑑みれば、右原告らの抗議行動により被告の営業に支障が生じることは否定することはできないが、だからといって、直ちに右行為が不法行為となるとはいえない。

また、会社臨時従業員らが右原告らのグランデ店前での抗議行動に対して行なった行為は、前記四2の(四)(2)、(六)(1)、(七)、(一二)、(一三)(1)各記載のとおりである。すなわち、会社臨時従業員らは、右原告らの抗議行動は被告の営業妨害行為にあたると考え、公の救済を求めることなく、右抗議行動に参加している原告組合員及び支援労働者を暴行等の実力をもって排除したものであり、その状況からいって、とうてい正当防衛の要件である「已ムコトヲ得スシテ」なしたる行為(民法七二〇条一項)とはいい得ない。

以上によれば、会社臨時従業員らが原告らのグランデ店前での抗議行動に対して行なった行為は、正当防衛の要件である「他人ノ不法行為」の存在を欠き、かつまた、「已ムコトヲ得スシテ」なされた行為ということもできない。したがって、右会社臨時従業員らの行為が正当防衛にあたるとの被告の抗弁は、理由がない。

(二)  原告らがグランデ店前での抗議行動に向かう途中に会社臨時従業員らが行なった行為

原告らのグランデ店前での抗議行動が不法行為にあたらないことは前記(一)のとおりであり、そうだとすれば、グランデ店前の抗議行動に向かう行為も被告に対し不法行為とならないことは、理の当然である。

また、会社臨時従業員らがグランデ店前での抗議行動に向かうため移動中の原告らに対し行なった行為は、前記四2の(六)(2)、(八)(2)、(九)、(一一)、(一七)(2)各記載のとおりである。すなわち、会社臨時従業員らは、原告らにグランデ店前で抗議行動をされると同店での営業が妨害されると考え、事前に、すなわち、グランデ店前に到達する前に、公の救済を求めることなく、自らの暴力をもって、原告らがグランデ店前に来るのを阻止したのであり、右会社臨時従業員らの行為は、正当防衛の要件である「已ムコトヲ得スシテ」なしたる行為(民法七二〇条一項)とは、とうていいうことができない。

以上によれば、会社臨時従業員らが、グランデ店前での抗議行動に向かう途中の原告らに対し行なった行為が正当防衛の要件を具備していないことは、前記(一)と同様である。よって、右会社臨時従業員らの行為が正当防衛にあたるとの被告の抗弁は、理由がない。

(三)  原告らがグランデ店前での抗議行動を終えて帰る途中に会社臨時従業員らが行なった行為

原告らのグランデ店前での抗議行動が不法行為にあたらないことは前記(一)のとおりであり、そうだとすると、グランデ店前での抗議行動を終えて帰る行為も被告に対し不法行為とならないことは、理の当然である。

また、会社臨時従業員らがグランデ店前での抗議行動を終えて帰る途中の原告らに対して行なった行為は、前記四2の(一)(2)、(二)(2)、(一一)各記載のとおりである。

そうすると、右会社臨時従業員らの行為が、正当防衛の要件を具備していないことは、前記(一)、(二)に述べたところによりおのずから明らかであり、右会社臨時従業員らの行為が正当防衛にあたるとの被告の抗弁は、これまた理由がない。

2  原告組合がピケストを行なっていたブックマート店に会社臨時従業員らが押しかけて行って行なった行為

会社臨時従業員らが、原告組合がピケストを行なっていたブックマート店に赴きピケッティング等を行なっていた原告らに対し行なった行為は、前記四2の(八)(1)、(一三)(2)、(一四)(1)、(2)、(一五)、(一六)(1)各記載のとおりである。

ところで、原告組合のブックマート店でのピケストの態様等は前記三1(二)記載のとおりであり、これが違法であることは前記五1(二)で認定したとおりである。しかし、右会社臨時従業員らのブックマート店での行為は、右原告組合のブックマート店での違法ピケストを排除し、右店舗での営業を行なうためにされたものではなく、もっぱら、右ピケスト等を行なっている原告組合員及びこれを支援する労働者に対し、暴力をもって、身体及び財産権等を侵害して嫌がらせをするためにされたものであって、正当防衛の要件である「自己又ハ第三者ノ権利ヲ防衛スル為メ」の行為、或いは、「已ムコトヲ得スシテ」なしたる行為とは、とうていいうことができない。

よって、右会社臨時従業員らの行為が正当防衛にあたるとの被告の抗弁は、理由がない。

3  原告組合員らの自宅、実家付近及び支援労働者の職場へ会社臨時従業員らが赴いて行なった行為及びその他の行為

(一)  会社臨時従業員らが、原告組合員の自宅又は実家付近へ赴き行なった行為は、前記四2の(五)及び(一九)各記載のとおりであり、また、支援労働者である原告大藪の職場へ赴き行なった行為は、前記四2の(四)(1)及び(一六)(2)各記載のとおりである。

しかしながら、右各場合に原告らが何らの不法行為も行なっていないことは明らかであり、会社臨時従業員らの行為が正当防衛にあたる余地は全くない。よって、右会社臨時従業員らの行為が正当防衛にあたるとの被告の抗弁は、理由がない。

(二)  また、会社臨時従業員らは、前記四2の(一七)(2)記載のとおり会社臨時従業員らの原告組合員に対する暴行を制止するため間に入った原告大久保に暴行を働いたり、また、前記四2の(一八)記載のとおり原告組合のピケスト排除後のブックマート店に原告組合の名誉を毀損する貼り紙を掲示しているが、右いずれの場合にも、原告らが何らの不法行為も行なっていないことは明らかであり、右会社臨時従業員らの行為が正当防衛にあたる余地は、全くない。よって、右会社臨時従業員らの行為が正当防衛にあたるとの被告の抗弁は、理由がない。

以上1ないし3の検討から明らかなとおり、被告の正当防衛の抗弁は、すべて理由がない。

八  損害額について

最後に、前記会社臨時従業員らの不法行為により原告らが被った損害額について検討する。

1  原告組合 一三〇万円

(一)  昭和五四年三月一五日までの損害額 三〇万円

原告組合が、右日時までに会社臨時従業員らの暴行等により組合活動を侵害された状況及びその結果被った損害状況は、前記四2の(二)(2)、(四)(2)、(六)ないし(九)、(一一)各記載のとおりである。

右事実に、本件不法行為に至った経緯等これまでに認定した諸般の事情を考慮すると、原告組合の被った損害は三〇万円と認めるのが相当である。

(二)  昭和五四年四月七日以降の損害額(追加請求分) 一〇〇万円

原告組合が、右日時以降、会社臨時従業員らの不法行為により組合活動を侵害された状況及びその結果被った損害状況は前記四2の(一二)、(一三)(1)、(一四)(2)、(一七)(2)各記載のとおりであり、団結権(組合の維持、存立)を侵害された状況及びその結果被った損害状況は前記四2の(一九)記載のとおりであり、名誉を侵害された状況及びその結果被った損害状況は前記四2の(一四)(1)、(一八)記載のとおりであり、所有権を侵害された状況及びその結果被った損害状況は前記四2の(一三)(2)、(一四)(2)各記載のとおりである。

右事実に、本件不法行為に至った経緯等これまでに認定した諸般の事情を考慮すると、原告組合の被った損害は、有形、無形の各損害を合算して、一〇〇万円と認めるのが相当である。

2  原告原 三六万六七八〇円

(一)  昭和五四年二月二七日の不法行為によって被った損害額(請求原因3(二)について)

昭和五四年二月二七日の会社臨時従業員らの原告原に対する暴行の態様、同原告の受傷の部位・程度、治療の経過及び治療費等の支払い状況などは、前記四2の(一)(2)記載のとおりである。

右事実に、本件不法行為に至った経緯等これまでに認定した諸般の事情を考慮すると、原告原の被った損害は、治療費及び診断書作成料が一六〇〇円、慰藉料が一〇万円の合計一〇万一六〇〇円であると認めるのが相当である。

(二)  昭和五四年四月八日、四月一一日、八月九日ころの各不法行為によって被った損害額(請求原因3の(一六)、(一九)、(二四)(2)について、追加請求分)

昭和五四年四月八日、四月一一日、八月九日ころの会社臨時従業員らの原告原に対する暴行又は嫌がらせ等の不法行為の態様、同原告受傷の部位・程度、カメラの購入価格及びその受傷の程度、治療の経過及び治療費等の支払い状況などは、前記四2の(一三)(2)、(一五)、(一九)(3)②の各記載のとおりである。

右事実に、本件不法行為に至った経緯等これまでに認定した諸般の事情を考慮すると、原告原の被った損害は、治療費及び診断書作成料が一万五一八〇円、カメラ代が五万円、慰藉料が二〇万円の合計二六万五一八〇円であると認めるのが相当である。

3  原告野中保夫 四九万四一二〇円

(一)  昭和五四年三月四日、三月五日、三月一五日の各不法行為によって被った損害額(請求原因3の(一三)、(一四)(2)について)

昭和五四年三月四日、三月五日、三月一五日の会社臨時従業員らの原告野中保夫に対する暴行又は嫌がらせ等の不法行為の態様、同原告の受傷の部位・程度、治療の経過及び治療費等の支払い状況などは、前記四2の(五)、(一一)各記載のとおりである。

右事実に、本件不法行為に至った経緯等これまでに認定した諸般の事情を考慮すると、原告野中保夫の被った損害は、診断書作成料が一〇〇〇円、慰藉料が二〇万円の合計二〇万一〇〇〇円であると認めるのが相当である。

(二)  昭和五四年四月八日以降の不法行為によって被った損害額(請求原因3の(一六)、(二四)(2)について、追加請求分)

昭和五四年四月八日、七月一九日から二四日ころの会社臨時従業員らの原告野中保夫に対する暴行又は嫌がらせ等の不法行為の態様、同原告の受傷の部位・程度、治療の経過及び治療費等の支払い状況などは、前記四2の(一三)(2)、(一九)(3)②各記載のとおりである。

右事実に、本件不法行為に至った経緯等これまでに認定した諸般の事情を考慮すると、原告野中保夫の被った損害は、治療費及び診断書作成料が四万三一二〇円、慰藉料が二五万円の合計二九万三一二〇円であると認めるのが相当である。

4  原告野中知子 二〇万円

原告野中知子が、昭和五四年三月四日、三月五日、五月二〇日ころ会社臨時従業員らの不法行為により名誉等を侵害された状況及びその結果被った損害状況は、前記四2の(五)、(一九)(3)①各記載のとおりである。

右事実に、本件不法行為に至った経緯等これまでに認定した諸般の事情を考慮すると、原告野中知子の被った損害に対する慰藉料は二〇万円が相当である。

5  原告佐々木 二〇万四一〇〇円

昭和五四年三月六日及び三月一五日の会社臨時従業員らの原告佐々木に対する暴行の態様、同原告の受傷の部位・程度、治療の経過及び治療費等の支払い状況などは、前記四2の(六)(1)、(一一)各記載のとおりである。

右事実に、本件不法行為に至った経緯等これまでに認定した諸般の事情を考慮すると、原告佐々木の被った損害は、治療費及び診断書作成料が四一〇〇円、慰藉料が二〇万円の合計二〇万四一〇〇円であると認めるのが相当である。

6  原告前田 二〇万一六〇〇円

昭和五四年三月八日、五月九日ころ、七月二二日から二三日ころの間の会社臨時従業員らの原告前田に対する暴行又は嫌がらせ等の不法行為の態様、同原告の受傷の部位・程度、治療の経過、治療費の支払い状況、退職の経緯などは、前記四2の(八)(2)、(一九)(3)の及び①、(一九)(4)各記載のとおりである。

右事実に、本件不法行為に至った経緯等これまでに認定した諸般の事情を考慮すると、原告前田の被った損害は、治療費及び診断書作成料が一六〇〇円、慰藉料が二〇万円の合計二〇万一六〇〇円であると認めるのが相当である。

7  原告流川 一〇万四四五〇円

昭和五四年三月一〇日の会社臨時従業員らの原告流川に対する暴行の態様、同原告の受傷の部位・程度、治療の経過及び治療費等の支払い状況などは、前記四2の(九)記載のとおりである。

右事実に、本件不法行為に至った経緯等これまでに認定した諸般の事情を考慮すると、原告流川の被った損害は、治療費及び診断書作成料が四四五〇円、慰藉料が一〇万円の合計一〇万四四五〇円であると認めるのが相当である。

8  原告笠原 三〇万一〇〇〇円

昭和五四年三月一五日の会社臨時従業員らの原告笠原に対する暴行の態様、同原告の受傷の部位・程度、治療の経過及び診断書作成料の支払い状況などは、前記四2の(一一)記載のとおりである。

右事実に、本件不法行為に至った経緯等これまでに認定した諸般の事情を考慮すると、原告笠原の被った損害は、診断書作成料が一〇〇〇円、慰藉料三〇万円の合計三〇万一〇〇〇円であると認めるのが相当である。

9  原告笹倉 四六万四二〇〇円

(一)  昭和五四年三月一五日の不法行為によって被った損害額(請求原因3(一三)について)

昭和五四年三月一五日の会社臨時従業員らの原告笹倉に対する暴行の態様、同原告の受傷の部位・程度、治療の経過及び診断書作成料の支払い状況などは、前記四2の(一一)記載のとおりである。

右事実に、本件不法行為に至った経緯等これまでに認定した諸般の事情を考慮すると、原告笹倉の被った損害は、診断書作成料が二五〇〇円、慰藉料が二五万円の合計二五万二五〇〇円であると認めるのが相当である。

(二)  昭和五四年四月一二日の不法行為によって被った損害(請求原因3(二〇)について、追加請求分)

昭和五四年四月一二日の会社臨時従業員らの原告笹倉に対する暴行の態様、同原告の受傷の部位・程度、カメラの購入価格及びその損傷の程度、治療の経過及び治療費等の支払い状況などは、前記四2の(一六)(1)記載のとおりである。

右事実に、本件不法行為に至った経緯等これまでに認定した諸般の事情を考慮すると、原告笹倉の被った損害は、治療費及び診断書作成料が一七〇〇円、カメラ代が一万円(カメラについては、使用期間について何らの立証もされていないが、弁論の全趣旨から右カメラを使用していたことが認められ、使用に耐えていたカメラであれば少なくとも一万円の価値があるものと評価した。)、慰藉料は二〇万円の合計二一万一七〇〇円であると認めるのが相当である。

10  原告大藪 二〇万一六〇〇円

昭和五四年三月二日、三月七日、四月一二日から五月下旬ころまでの間の会社臨時従業員らの原告大藪に対する暴行又は嫌がらせ等の不法行為の態様、同原告の受傷の部位・程度、治療の経過及び治療費等の支払い状況、同原告の被った困惑度などは、前記四2の(四)(1)、(七)、(一六)(2)各記載のとおりである。

右事実に、本件不法行為に至った経緯等これまでに認定した諸般の事情を考慮すると、原告大藪の被った損害は、治療費及び診断書作成料が一六〇〇円、慰藉料が二〇万円の合計二〇万一六〇〇円であると認めるのが相当である。

11  原告山本 四四万〇四八〇円

(一)  昭和五四年三月六日、三月一〇日の各不法行為によって被った損害額(請求原因3の(七)、(一一)について)

昭和五四年三月六日、三月一〇日の会社臨時従業員らの原告山本に対する暴行の態様、同原告の受傷の部位・程度、治療の経過及び治療費等の支払い状況は、前記四2の(六)(1)、(九)各記載のとおりである。

右事実に、本件不法行為に至った経緯等これまでに認定した諸般の事情を考慮すると、原告山本の被った損害は、治療費及び診断書作成料が一万六〇六〇円、慰藉料が三〇万円の合計三一万六〇六〇円であると認めるのが相当である。

(二)  昭和五四年四月一三日の不法行為によって被った損害額(請求原因3(二二)について、追加請求分)

昭和五四年四月一三日の会社臨時従業員らの原告山本に対する暴行の態様、同原告の受傷の部位・程度、治療の経過及び治療費等の支払い状況などは、前記四2の(一七)(2)記載のとおりである。

右事実に、本件不法行為に至った経緯等これまでに認定した諸般の事情を考慮すると、原告山本の被った損害は、治療費及び診断書作成料が二万四四二〇円、慰藉料が一〇万円の合計一二万四四二〇円であると認めるのが相当である。

12  原告和田 一〇万一六〇〇円

昭和五四年三月六日の会社臨時従業員らの原告和田に対する暴行の態様、同原告の受傷の部位・程度、治療の経過及び治療費等の支払い状況などは、前記四2の(六)(2)記載のとおりである。

右事実に、本件不法行為に至った経緯等これまでに認定した諸般の事情を考慮すると、原告和田の被った損害は、治療費及び診断書作成料が一六〇〇円、慰藉料が一〇万円の合計一〇万一六〇〇円であると認めるのが相当である。

13  原告三田義樹 一〇万一六〇〇円

昭和五四年三月六日の会社臨時従業員らの原告三田義樹に対する暴行の態様、同原告の受傷の部位・程度、治療の経過及び治療費等の支払い状況などは、前記四2の(六)(2)記載のとおりである。

右事実に、本件不法行為に至った経緯等これまでに認定した諸般の事情を考慮すると、原告三田義樹の被った損害は、治療費及び診断書作成料が一六〇〇円、慰藉料が一〇万円の合計一〇万一六〇〇円であると認めるのが相当である。

14  原告林 一一万一三六〇円

昭和五四年三月一〇日の会社臨時従業員らの原告林に対する暴行の態様、同原告の受傷の部位・程度、治療の経過及び治療費等の支払い状況などは、前記四2の(九)記載のとおりである。

右事実に、本件不法行為に至った経緯等これまでに認定した諸般の事情を考慮すると、原告林の被った損害は、治療費及び診断書作成料が一万一三六〇円、慰藉料が一〇万円の合計一一万一三六〇円であると認めるのが相当である。

15  原告秋山 一一万二八二〇円

昭和五四年四月八日の会社臨時従業員らの原告秋山に対する暴行の態様、同原告の受傷の部位・程度、治療の経過及び治療費等の支払い状況などは、前記四2の(一三)(1)記載のとおりである。

右事実に、本件不法行為に至った経緯等これまでに認定した諸般の事情を考慮すると、原告秋山の被った損害は、治療費及び診断書作成料が一万二八二〇円、慰藉料が一〇万円の合計一一万二八二〇円であると認めるのが相当である。

16  原告木村 二〇万三六〇〇円

昭和五四年四月八日の会社臨時従業員らの原告木村に対する暴行の態様、同原告の受傷の部位・程度、治療の経過及び治療費等の支払い状況などは、前記四2の(一三)(1)記載のとおりである。

右事実に、本件不法行為に至った経緯等これまでに認定した諸般の事情を考慮すると、原告木村の被った損害は、治療費及び診断書作成料が三六〇〇円、慰藉料が二〇万円の合計二〇万三六〇〇円であると認めるのが相当である。

17  原告中村 三四万七八四〇円

昭和五四年四月八日の会社臨時従業員らの原告中村に対する暴行の態様、同原告の受傷の部位・程度、治療の経過及び治療費等の支払い状況などは、前記四2の(一三)(2)記載のとおりである。

右事実に、本件不法行為に至った経緯等これまでに認定した諸般の事情を考慮すると、原告中村の被った損害は、治療費及び診断書作成料が四万七八四〇円、慰藉料が三〇万円の合計三四万七八四〇円であると認めるのが相当である。

18  原告三田敬 一〇万八九二〇円

昭和五四年四月八日の会社臨時従業員らの原告三田敬に対する暴行の態様、同原告の受傷の部位・程度、治療の経過及び治療費等の支払い状況などは、前記四2の(一三)(2)記載のとおりである。

右事実に、本件不法行為に至った経緯等これまでに認定した諸般の事情を考慮すると、原告三田敬の被った損害は、治療費及び診断書作成料が八九二〇円、慰藉料が一〇万円の合計一〇万八九二〇円であると認めるのが相当である。

19  原告大久保 一五万三六〇〇円

昭和五四年四月一三日の会社臨時従業員らの原告大久保に対する暴行の態様、同原告の受傷の部位・程度、治療の経過及び治療費等の支払い状況などは、前記四2の(一七)(2)記載のとおりである。

右事実に、本件不法行為に至った経緯等これまでに認定した諸般の事情を考慮すると、原告大久保の被った損害は、治療費及び診断書作成料が三六〇〇円、慰藉料が一五万円の合計一五万三六〇〇円であると認めるのが相当である。

九  結論

以上によれば、原告らの被告に対する本訴請求は、別紙認容金額一覧表の「認容金額」欄記載の金員及び同表の「遅延損害金額」欄記載の金員(なお、同欄記載の遅延損害金の起算日は、いずれも不法行為発生後の日である。)の支払いを求める限度で理由があるからこれを認容し、その余の部分は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条を、仮執行宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石井健吾 裁判官永吉盛雄、同難波孝一は、転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官 石井健吾)

〈以下省略〉

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